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浄土宗の法話【2013年7月1日】

ありがとう 世話になるな

   お寺の世話人を永い間勤められたIさん、平成2年に脳梗塞を患い半年後に72歳にて極楽往生なされました。当初は入院治療をしていましたが自宅の新築工事も完成し、息子さん夫婦も新しい家にて療養してほしいとの思いもあり、自宅にて療養することとなりました。念願の新しい家、新調されたお仏壇に囲まれて3ケ月位はご機嫌でしたが、段々と笑顔が消えてきました。当時小学校4年生になる女の子の孫が、お爺ちゃんを毎朝夕見舞っていましたが、その頃より「お爺ちゃんの顔怖い」と見舞わなくなりました。半身不随で身体の自由は利かないが、頭はしっかりしている、歯痒さもあったのでしょう。・・・なんで俺だけがこんな目に遭わなきゃならん、俺は何も悪い事はしてない・・・という愚痴が出るようになりました。小さい子は敏感です。Iさんの顔が知らず知らずの内に怖い顔になっていたのです。孫には直接愚痴を言いませんでしたが、奥さん、息子夫婦は毎日のように聞かされていました。それで困って、お鉢が私に回って来ました。

   「和尚さん、何か良い手立てはないか?」そんな事を言われても、家の者が解決できない事を急に良くする妙案は浮かびません・・・

   Iさんは亡くなられる3週間前位から愚痴が出なくなり、身体の調子の良い日には家族に頼んで仏間に連れて貰い、座椅子にもたれ掛りながら、不自由な右手を左手で持ち上げ(合掌の姿)拝まれる事が度々有ったそうです。

   Iさんは死の1週間前に、

   「和尚さん、わし最近こう思えるようになった。今迄は、病気になって悔しい思いだけだったけど、よく考えて見ると家に居て三度三度の食事の世話、風呂に入れて貰うこと、下の世話、病人だからやって貰って当たり前と思っていたが、1日でも放っておかれれば自分では何も出来んわな。それなら、やって貰って当たり前と苦虫潰した顔をしているより、『ありがとうな、世話になるな』と一言でも感謝の気持ちを返す事が、今のわしの出来る仕事じゃないか。」

   と私に言い残されて往きました。

   Iさんの葬儀が終わり、初七日後の会食の席で息子のお嫁さんが

   「お爺ちゃん、家族が見守る中息を引取る前に『ありがとうなあ、世話になったなあ』と言って亡くなっていかれた。私も十分な世話が出来たか分かりませんけど、その言葉が救いとなっています。」

   と、涙ながらに語られました。

   Iさん、最晩年はお念仏の暮らしの中に阿弥陀様のお護りを頂き、心安らかにお迎えを受け極楽往生なさいました。そして、後に残る人達にも心の安らぎを残されて往かれました。拝みあう暮しは皆を幸せにします。私達もお念仏暮らしの中に、互いに拝みあい、幸せになる暮らしを心掛けていきましょう。

愛知県岡崎市 長壽寺 神谷真章