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浄土宗の法話【2015年06月15日】

消さないように

 お寺の法要で、お導師の薫じた御香が自分の方に流れて、いい香りがすると大変清々しい気分になります。お香は焚いたり、粉末状にして体に塗って、私たちの身と心を清めるなど、仏教儀式に欠かせないものとして使われてまいりました。
 お香はふつう香炭(こうたん)という焼香用の炭の上で焚くのですが、この香炭がなかなか扱いづらいものでした。二つに割って使用するときには手が汚れる。火が付きにくく、火が付いても途中で消えてしまうことも少なくありませんでした。私のお寺で使用している香炭は一個4センチほどの物で、急に1年ほど前から両端が鋸(のこぎり)状にカットされ、その形が大きく変わりました。使ってみると明らかに火が付きやすく消えにくい。着火する端をギザギザにすることで、空気に触れる面積が増えるよう改良されたのです。
 私が想像するに仏事で使用する道具というものは、社会の変化とともに近年その需要は減少の一途を辿っていると思われます。その厳しい状況の中で設備投資をして製品を改良することは並大抵のことではないでしょう。私は非常に気になってその香炭を製造している会社に尋ねてみました。その会社では材料の調合や乾燥方法など独自の手間と工夫をかけ、日々、製品の改善に努めているということでした。
 香炭の種火が消えないようにするのも弛まぬ努力が欠かせませんが、私たちをお救い下さる仏様のみ教えの灯も、消えないようにするには、しっかりと受け継いでいかなくてはなりません。
 私がある時、20年前に事故でご子息を無くされたKさんという方のお家を訪ねた時のことです。食器棚の上に亡くなられた息子さんのご遺骨が置かれていました。Kさんにお話を伺うと「この20年、ずっと息子の帰りを待ち続けている。」ということでした。帰って来ない者を待ち続けなければならないことは大変な苦しみです。Kさんのお宅に、仏壇や位牌は見当たりませんでした。最近、Kさんのように、それまで仏様と縁が無い方が増えているのではないかと、一僧侶として力不足を感じずにはいられません。
 阿弥陀様は、私たちが南無阿弥陀仏と称えることによって極楽浄土に救い取るとお誓い下さりました。そして約840年前、法然上人によってお念仏の火が灯され、私たちに受け継がれてまいりました。その永い歴史の中で私たちのご先祖が、そのみ教えの火を絶やさぬよう心血が注がれてきたことと思います。
 私たちがいつ何時、大切な人を失い苦しみの底に落ちるか分りません。その時、阿弥陀様に救われて極楽に往くことを願うことが、どれほど私たちの救いになり、生きる糧となることでしょう。
 残念ながら最近では『直葬』や『墓じまい』などといった言葉が、無責任に氾濫しています。しかし、平穏無事で生きていくことが難しいこの世で、お釈迦様のみ教え・お念仏のみ教えを自分の子や孫に遺すことは、いつか子や孫の大きな救いとなりましょう。お念仏のみ教えの灯を、次の世代に相続できるよう、お仏壇やお墓など供養のあり方を考えてみては如何でしょうか。
 後日、Kさんから、「小さいけれども仏壇を置きたい」と有難い知らせがありました。

なむあみだぶつ

伊勢教区 四日市組 光運寺 伊藤洋介