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浄土宗の法話【2016年8月15日】

お盆のこころ

 お盆になると歳のせいか、小さい頃の墓参りの様子を思い出す。多くのお宅が親子三代でお参りする。ホオの木の葉を皿に、赤飯・煮しめ・キュウリの酢の物などを供える。家族の一人が僧侶を呼びに行く。読経の順番待ちで、他家の墓前で読経している僧侶を五・六人が「次はわが家の墓」とばかりに待っている。時には「順番が違う」と揉めることもある。
 私も、お墓での読経を小学三年生から手伝っていた。大勢の大人と、同じ小学校に通う子供の前での読経は、緊張するやら恥ずかしいやらで、正直言って毎年苦痛であった。読経が終わると、墓の前にゴザを敷き、ピクニックの如き会食が始まる。
 お供えしたものをいただき、男は酒を飲む。笑い話をする者、先立った親・兄弟の話で泣く者、悲喜交々である。
 会食が終わると、『目には見えない』御先祖と共に家に帰る。
 私の田舎では、親に「お盆中は海水浴に行ってはいけないよ。亡くなった人に足を引っ張られるからね!」と言われていた。それは「お盆中くらい御先祖と一緒に過ごしなさい」という躾であったのだ。
 日本は古くから仏教と神道が融合し、お盆とお正月は御先祖が帰ってくるという日本独特の尊い習わしがある。奉公や仕事で里から離れている者が、年に二度里帰りし、御先祖・家族と共に食事をする。その為に持ち寄った食べ物が、お中元でありお歳暮である。
 近年、内閣府より「家庭における共食を通じた子供への食育」が提唱された。共食が健全な心身を養い、豊かな人間性を育むということである。
 現代の生活スタイルは、家族そろって食事をする回数が減り、それが原因と思われる弊害が出てきている。しかしその根本は、お盆・お正月のこころよりも、レジャーや娯楽にばかりに興じていることにも原因があるような気がする。
 この世で文明を持つものは人間だけである。前の時代の人たちの文明を工夫し、考えて作られたものが今の文明である。パソコン・スマホをはじめ、今の便利な社会は先人のお陰以外の何ものでもない。
 御先祖のお陰を家族と共々にかみしめ、今ある命に感謝し、お念仏をお称えするお盆を忘れてはいけない。

合掌

北海道第一教区 江差組 法然寺 松本 信成