「ママだいすき!」のチカラ

緊急事態宣言の解除から2か月。感染防止に気遣いながら社会は動き出し、子どもたちにも学校のある毎日が戻ってきました。「いってきます!」と言って駆けていく背中を見送りながら、2ヶ月間にわたった自粛生活を思い出しています。

4月8日。小学校の休校から1か月がたち、緊急事態宣言の発令があったことで、ついに保育園からも登園自粛要請がきました。同時に職場も在宅勤務となり、9歳、7歳、3歳の3人の子どもたちと、同じく在宅勤務の夫との家族5人での″おうち生活“が始まりました。

 

初めは、通勤時間や子どもの身支度の手伝いがないことに、「なんてラクなの! 在宅最高!」と思っていたのですが、とんでもない思い違いでした。3食の準備と片付け、買い出し、子どもの勉強(2人の小学生:「ママ―、わかんなーい!」と呼び出し)、子どもと遊ぶ(3歳児:「ママー、お外で遊ぼー!」 と呼び出し)、そして仕事。テレビ会議の最中に、3歳児が乱入してきて「ママー、パパー!うんち」・・・。全然進まない仕事は夜中にやるしかありません。結局、何をしていたのか分からないほど混乱のうちに一日が過ぎていました。

翌日から、「これじゃいけない!」と、夫と相談して時間割を決めることに。午前中は勉強、お昼を食べたら午後は3歳児をお昼寝させて仕事、夕方は子どもと遊ぶ、うん、いい感じ、回ってきた。…と、思ったのも束の間、3日もたつと「ちゃんとやらなきゃ、全部きっちりやらなきゃ」と自分を追い立てていたのか、いつのまにか家族の誰かに怒ったり叱ったりばかりしていることに気づきました。

子どもたちから、「外で遊んでいい?」と聞かれたときには、LINEの会話で病院や施設勤務のママたちの切迫した状況を聞いて認識の違いを反省していたこともあり、「マスクしてよ! 手洗いもちゃんとしてよ! 大きい声は出さないで! なるべく目立たないようにね!」と、近所の目を気にして神経質になっていました。ゆったりとした″おうち生活“どころか、怒ったりピリピリしたりの連続で1週間もすると気持ちも身体もすっかり疲れていました。

そんなある日の夜中、散らかったリビングを片付けていると、机の下に1枚のコピー用紙が落ちていました。拾い上げてみると、お手紙の書きかけだったのか、「ママだいすき」の6文字が書いてありました。たった6文字。でもその6文字を見た瞬間、なんだかふっと力が抜けたのでした。そうだよ、せっかく家族でいられるんだから、こんな機会もうないかもしれないんだから。楽しまなくちゃ。そう思い立ち、次の日、ホームセンターでトマトの苗を買いました。小さな庭に植木鉢を置いてみんなで水やりをしながら、通りがかった同じく在宅勤務のママ友とフェンス越しのおしゃべり。子どもの課題の進捗、仕事の進み具合、お昼の献立、マスクや消毒液の譲り合い…。たわいない会話ですが「みんないっしょなんだ」と私を癒してくれました。

6月、分散登校、時短保育、時短勤務と少しずつ、さまざまなことが始まりました。生活リズムのリセット、子どもだけのお昼の準備、保育園の送り迎え、ママの日常は体力勝負。朝、自転車ですれ違うママ友と「今日もがんばろう!」とエールを送り合います。

そうこうしているうちに、季節はもう夏。あの日植えたトマトの実が赤く色づいています。習い事も再開され、また一つ、送り迎えが追加されました。さあ、これからがもっと大変!
でも大丈夫、みんないっしょだから。

(2020年7月27日 飯田 薫 / 浄土宗ともいき財団)