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今月の言葉:2018年03月

歩みのはやさ それぞれ

Don't worry about competing with others, just move forward at your own pace.

 木々が芽吹き始め、温かい春の風を感じる季節となりました。
 先日、大本山増上寺にお参りした時のことです。静かに法要を見ている海外のご家族がいらっしゃいました。法要後、その中の高校生の男の子に話しかけられました。彼は小学生の時サッカーが大好きになり、今まで続けてきたそうです。しかし彼は、仲間たちが上達し強化選手に選ばれていく一方、自分自身があまり成長できていないことに悩んでいるようでした。
 話を聞いているうち、彼の表情が暗いことに気づきました。大好きで始めたサッカーの話をしているにも関わらず、彼は楽しそうではなかったのです。激しい競争の中で、いつの間にか彼はサッカーを楽しむことよりも、ライバルより上手くなることを目指すようになってしまったようでした。
 私たちはつい自分の物差しで、他人や自分を比較してしまいます。それは欲望から逃れられない世界に生きる私たち凡夫にとって仕方ないことかもしれません。しかし、多少の差があったとして、それが人そのものの価値と直接結びつくでしょうか。人は絶えず進歩します。その早さはそれぞれ。大切なのは歩みを止めないことでしょう。
 私たち浄土宗がよりどころとするお経の一つ『観無量寿経』に、「光明徧照 十方世界 念仏衆生 摂取不捨」という一文があります。これは、阿弥陀さまのお慈悲の光は、すべての人を公平に照らし、お念仏する人を決して見捨てはしない、という意味です。お念仏を多くとなえたから、逆に少ないからといって阿弥陀さまは区別をされません。阿弥陀さまは人と違うからといって見捨てたりはされません。お念仏をとなえるすべての人を平等にお救いくださるのです。そして、阿弥陀さまのお慈悲の光は、その御心をいただいてお念仏をする人に宿り住し、澄みわたります。
 私たちは日常生活のなか、比較され、評価されることがあります。しかし、一人ひとりに個性があるように、歩みの早さも違います。他人と比べたり競争したりすることだけに心を奪われるのではなく、自分のペースで一瞬一瞬を生きていきたいものです。海外のサッカー少年との会話で、そのことに改めて気づかされました。
 阿弥陀さまのお慈悲の光がすべての人に注がれているということを忘れずに、そのありがたみをしっかりと受け止め、一歩ずつ自分の歩みでお念仏を申す日々を過ごして参りましょう。
(仙台市若林区 愚鈍院 中村悟眞)

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