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今月の言葉:2018年04月

天上天下唯我独尊

Show respect for others by respecting yourself.

 若いご夫婦がおめでたのご報告に来てくださいました。妊娠4カ月。ところが、奥さまが妊娠糖尿病で1週間入院して大変だった、というのです。胎内の子どもに栄養分を送らなければならない母親(奥さま)の血糖値に異常をきたすのがその症状。
 入院中、奥さまは症状の改善のため食生活について細かいアドバイスを受けられたようで、「今まで気にしたこともなかったけれど、自分の体だけではなく、子どものことやこれからの家族の食生活のことを真剣に考えるようになりました」とおっしゃいました。
 さらに、「私の父は豪放なタイプで、〝人生は太く短くだ!〟というのが口ぐせだったのに、急に節制を始めたみたいです。祖母も、孫の私たちが自分の道を歩き出したことを喜ぶ反面、それぞれがそれぞれの日常を送るようになって家族がバラバラになり、寂しさを感じていたようで、無気力になり〝終活〟で身の回りの整理を始めていました。でも、ひ孫が宿ったことを聞いてまるで生気がよみがえったようになりました。
 まだ何カ月かの小さい命が、こんなにも私たちに訴えかけてくるなんてすごい、と思いました」
 奥さまのこの話を聞き、天と地を指さして〝天上天下唯我独尊〟(この世界において、私たち一人ひとりが尊い存在である)と高らかにおっしゃった、生まれたばかりのお釈迦さまの姿を思い浮かべました。生まれてくる命は、私たちを一度原点にたちかえらせてくれます。大事なのは、そこからどういう生き方をするか、だと思います。
 最近、「子育ては負担だ」とか「犠牲を強いられる」ということばを耳にしますが、少し自己本位が過ぎるのではないでしょうか。もし自分の親から「おまえたちを育てるのは大変な負担であった」とか「ずいぶん私が犠牲になったのよ」などと言われたらどう感じるでしょうか?
 子どもは私たちの希望であり、未来です。子育てのポイントは、親が少しでもいいから気持ちよく自分を空けわたすことだと思います。仏教には自分という主体は本来ない、とする考え方(無我)があります。子育てはそれに気付き、自分を空けわたすための修行と考えて良いのではないでしょうか。
 この奥さまのように、一人ひとりが尊い存在として意味を見いだせる感性が大切であり、大事にしてもらい、大事にしてあげられる生き方に舵を切ってまいりたいと思う今日このごろです。

(滋賀県東近江市 正福寺 関正見)

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