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今月の言葉:2018年10月

曇り夜も 月は輝いている

Behind the clouds, the moon still shines, just as the compassion of Amida Buddha continually radiates forth.

 父子家庭で育ったある娘さんのお話です。お父さまは娘さんを立派に育てあげた後、亡くなられました。その娘さんはお父さまが亡くなってから、自分の知らない父の話を耳にすることが多くなったといいます。その内容は、「母親がいないのでどのようにすればいいのかわからない」という周囲への相談などだったそうです。娘さんは、自分の知らない所で気にかけてくれていた、それを知ることができたことが嬉しかったとおっしゃっていました。そして、父が亡くなり、一人ぼっちになった今でも、見守ってくれている気がするとのことでした。
 このような経験はどなたにもあるのではないでしょうか。私の祖父は私が中学生の時に亡くなりました。3月のまだうすら寒い夜、きれいな月が出ていたのを今でも覚えています。当時、祖父との思い出といえば、小さいころのぼんやりとしたものしかありませんでした。しかし時間が経つにつれて、私も周りから私の知らない祖父のことを聞くようになりました。小さい私の手を引き、よく本堂のお参りをしたこと、周囲にはよく私の話をしていたことなど。時には祖父の思い出が、私と全く関係のなかった方を繋ぎとめてくれていることに気づかされることさえあります。このような時、祖父が今でも見守ってくれているように感じることが確かにあるのです。

 月かげの 
  いたらぬさとはなけれども
   ながむる人の 心にぞすむ

 法然上人の御歌です。月の光は遮られることなく、どこにも分け隔てなく届きます。しかしいくら月の光が映えていても、気がついて眺める人にしか、その心には届かないという意味です。
 月の光と同じように、阿弥陀さまの光明はあらゆる世界を照らし、全ての方をお救いくださいます。しかしその光を見ようとしなければ、阿弥陀さまの御心みこころにさえ気づくことはできません。また法然上人は、阿弥陀さまの光明は生まれた時から臨終まで照らし続けて、決して捨てることはないともおっしゃっています。
 心細いときがあっても、阿弥陀さまはきちんと見ていてくださいます。たとえ曇り夜でも、月は雲の上で輝いているように、目には見えなくても阿弥陀さまとご一緒にいらっしゃるあの方も、あなたを気にかけてくださっているでしょう。その眼差しを感じながら、お念仏の日暮らしを大切にしていきたいものです。
(埼玉県戸田市 常福寺 渡邉龍彦)

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