今月の言葉:2019年05月

少欲知足

Being happy with less makes for greater happiness.

 相田みつをさんの詩の一節に「うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる」という言葉があります。この言葉はしばしばモノの豊かさを計る時に引用されますが、私たちは物質的に恵まれ、モノがあればあるほど豊かな生活になると思いがちで、その豊かな生活を求めるあまり、私たちの日々の生活の中でもモノをめぐって、分け合うことよりも奪い合うことに慣れてしまっていると気づかせてくれます。
 これは実際に私が目にした光景です。
 滋賀県では8月のお盆の時期に施餓鬼せがき法要があります。真夏の暑いさなかですから、法要中、お参りしているお檀家さんを見ると、額の汗を拭いながら暑そうにされています。すると、ある男性が一定のリズムで左右に行ったり来たりと不自然な動きをしているのが目に止まりました。何をしているのかとよく見ていると、その男性の後方に扇風機があって、首振りにあわせて左右に動いていたのです。首振り機能は、涼しい風をみんなで分け合うためのものでもあるのに、この男性は暑さのあまり、知らず知らずのうちに、みんなで分け合う涼しい風を奪い、しばらくの間、独り占めしてしまっていたのです。私はそれを見て、思わず苦笑いをしてしまいましたが、私もこの男性の立場であれば同じ行動をとっていたかも分かりません。
 まさに「うばい合えば足らぬ わけあえばあまる」ことを教えてくれているのですが、このことを仏教では「少欲知足しょうよくちそく」といいます。欲を少なくして足ることを知り、今与えられているものに満足する、という意味です。
 「少欲知足」について、世界でいちばん貧しい大統領と呼ばれたウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領の、ある国際会議でのスピーチの内容が全世界で感動を呼びました。「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」と語っていました。まさに、本当の豊かさについて教えてくれているのです。仏教では奪い合うほどの欲を「貪欲とんよく」といって戒めています。
 法然上人は、「少欲知足」を「喜足小欲きそくしょうよく」と言い換え、「足ることを喜び、強く欲しない」ことを私たち念仏者のたしなみとして示しています。その反対に「不喜足大欲」は戒められています。
 私たち念仏者はできるだけ「不喜足大欲」を慎み、「喜足小欲」の精神を心がけ、心豊かに日々、お念仏を喜んでまいりましょう。

 (滋賀県大津市 雲住寺 井野周隆)

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