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今月の言葉:2020年02月

よく聞き考え 自分のものに

Listen carefull and with an open mind to others.

 先日、大相撲の親方の講演会に行きました。その方は、自分の新弟子時代のことを話されていました。
 毎朝4時に起きて土俵で稽古けいこし、兄弟子には相撲のことだけではなく、日常の行儀作法にいたるまで、一日中叱られてばかり。やはり時にはカッと頭に血が上ることもあったそうです。
 そんな折、休暇で実家へ帰り、母の手料理をお腹いっぱいに食べ、休憩していると、食卓の上にあった母の日記帳に目が留まりました。悪いと思いながらもめくると、母が毎朝、4時に起床していると書かれていました。わが子の無事を願い、心配で毎日同時刻に起きてくれていたのです。それを読み、彼の考えは変わりました。兄弟子が注意してくれるのは、すべて自分のためだ。自分を強くするためだ。冷静によく聞いて自分の力にしていこう。目には見えない、母の心に導かれたと語られました。
 人は誰しも感情的に指摘されると、素直に受け取れずに、反発しやすいものです。その親方がそこでグッとこらえることができたのは、目に見えない母の支え、愛情に包まれていたからでしょう。
 私は、幼いころ母親に、
「あなたは始末(かたづけること)が悪い」
と、よく注意されていました。この言葉を聞かされると、いい気持ちにはなりません。たいてい、始末が悪いせいで、物をどこかに置いてしまって、探し物をしている時に言われるのです。思わずイライラしますが、これほど的確な指摘はありません。
 ところが、母が亡くなってから15年が経ち、わが子を育てる中にふと、私が信じられない言葉を子どもに発していたのです。
「あなたは始末が悪い」
 今度は、私が親の立場にありました。愛情による指摘は時に無意識であり、無条件なため、子どもは反発心を持つことがあります。その反面、この子を必ずよくしよう、間違いなくいい大人にしよう、との願いがこめられているのだと気づきました。
 法然上人は、「自身安穏あんのんにして念仏往生をげんがためには、何事もみな念仏の助業じょごうなり」と仰せになりました。これは、念仏往生を遂げるためにつながることは、あらゆることがお念仏を助ける修行になるというものです。
 周囲の助言に反発したくなる時もありますが、それをよく聞き、考え、自分のものにいたしましょう。

(京都市伏見区 大善寺 羽田龍也)

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