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今月の言葉:2020年06月

たまには 心も雨やどり

From time to time, give your mind and body a good rest.

曇天から降る雨が紫陽花あじさいの花を濡らす季節になりました。雨音を聞きながら、長雨に活気づく庭の命を窓の向こうに眺めるのも、例年ならばこの時期の楽しみの一つです。しかし、今年は家の中にいる時間が長くなり、室内の空気を吸いながらそうがいに目を向けてばかりの生活に心も体もお疲れの方も多いことでしょう。
 お釈迦さまは旅の中で教えを広め、生涯に渡りインド各地を歩き続けました。そんなお釈迦さまでしたが、ある時を境に雨季の間は一箇所にとうりゅうして過ごすようになりました。インドは雨季になると、雨とともに大地に息吹が戻り、草木が芽吹き、生き物が活発に動き始めます。その時期も旅をしていたお釈迦さまとその弟子たちでしたが、草木の芽や、そこに生きる虫たちを踏む姿を見た人々が、「私たちは正しい教えを知っている」と外では言っているのに、酷いことをするのものだ、と非難したそうです。また雨季は大雨で洪水が起こり、出家者の修行をさまたげたり、危険な目にあうこともあり、雨季の期間は旅をやめ、一箇所にとどまって修行をすることとしたのです。
 この逗留生活を「あん」といい、お釈迦さまが生きとし生けるものと自らの命を守るためにはじめたものです。こう考えると、ウイルスの感染が広がる中での私たちの行動も、安居の一種といえそうです。安居はまた合宿のような一面もあり、一箇所にとどまりながら、お経や戒律をしっかりと学ぶ期間でもありました。最終日には全出家者がつどい、その期間の生活を振り返る「」という儀式が行われました。この儀式を終えると、自分自身をほしいままに、自由になるというものです。
 案外、この合宿生活は修行になれた出家者にとっても息苦しく感じるものだったのかもしれません。色々な要請に応えながら自粛生活をする私たちの姿に重なります。なお、この自恣の儀式を終えた出家者に食事を振る舞ったのがお盆のはじまりです。
 恵みの雨も振り続けると、大きな災害を引き起こすこともあります。ましてや今年は随分と長く、苦しみや悲しみの雨が降っています。いつか来る快晴の一日を心身ともに楽しめるよう、身体は万全の感染対策で、心の重荷は仏さまにお預けをしながら、しっかりと雨宿りをしてお過ごしください。

(横浜市南区 光明寺 石田一裕)

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