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今月の言葉:2020年12月

信頼はかたちのない財産

Trust is one of life's precious properties.

信頼という言葉を辞書で引くと「信じて頼りにすること。頼りになると信じること。また、その気持ち」とあります。あらためて考えてみると、日ごろ私たちは何を信頼して生活をしているでしょうか。
 
私たちは人間関係、健康、金銭など、多くのものを信じて頼りにすることで生きています。しかし、今年は今まで信頼していたものが根底から揺らいだ一年でありました。まだまだ先行きの見えない状況で、これから何を信じ頼って生きていけばいいのでしょう。
 
数年前、視覚障害の疑似体験ができる施設へ行く機会がありました。内容は初対面の数人がグループとなり、完全に光を遮断した暗闇の空間を探検しゴールを目指すというもの。一寸の光もない真っ暗闇では、周りはもちろん、目の前にあるはずの自分のてのひらすらも見えません。小さな歩幅で一歩進むごとに腰が引けます。思わず隣の人とぶつかったり、段差につまずいたり、今までにない恐怖と不安を感じました。
 
そのとき、誰かが「私はここにいます」と声を発しました。すると次々に「隣に誰かいませんか」「私の肩に触れてください」と初対面の参加者同士が声を掛け合いはじめました。見えないけれど、そばにいる人の存在がありがたく、ひたすら声を掛け合います。「段差がありますよ」と、先を行く人が教えてくれます。声を出すことでお互いに信頼し、暗闇を抜けることができたのでした。
 
法然上人のご法語に「しゅじょう、仏をらいすれば、仏これを見たまう。衆生、仏をとなうれば、仏これを聞き給う。衆生、仏を念ずれば、仏も衆生を念じ給う」とあります。これは、いついかなる時も、私たちが声に出して南無阿弥陀仏とおとなえすれば、「ここにおるぞ、必ず救うぞ」と、阿弥陀さまが必ず寄り添い導いてくださることをお示しくださったものです。
 
新型コロナウイルスにほんろうされるこの不安な生活は、まさに先の見えない暗闇を手探りで進むようなものです。声に出すお念仏で阿弥陀さまに見守られる安心感を心のよりどころとして暮らしてまいりましょう。
 
お念仏の声が積み重なる日暮しが、きっと皆さんにとってかけがえのない素晴らしい財産ともなっていくことでしょう。

(長崎県大村市 長安寺 吉田武士)

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