総本山知恩院御影堂落慶御遷座法要 伊藤唯眞猊下による御垂示
粛然と念仏に生きる
令和2年4月13日、御影堂落慶にあたり、元祖法然上人御影像を
お遷しする「国宝御影堂落慶御遷座法要」を厳修いたしました。
その際に伊藤猊下がお話になられたお言葉です。
ただ今、宮殿が開かれ、新しい御影堂に元祖様がお遷りいただきました。御影堂も開きました。建物であったこの御影堂に元祖様の命脈が行き届いたのであります。生きた本堂となりました。こんな喜びがありましょうか。
私たちは皆がこの喜びを持って、念仏のいのちを広く外に向かって伝えていくならば、元祖様が願われた万民の幸せを少しでも皆が感じ取れるようになるかと思います。これこそが遷座、そして御影堂落慶の大いなる意義であるかと考えます。私どもは念仏を申して生きられた祖師の教えを受けて生かさせていただいております。
今、私たちの周りは平生さを欠いてまいりました。つまり、新型コロナウイルスの疫疾によりまして、世界が大きく波打っております。人々が、今、苦難に見舞われております。平生だった人々の生活が異常になり、異常になった時に私たちが気付いたのは、いかに平生が有難かったかということであります。
新たに造られたこの御影堂から新しい息吹が生じ、それに触発された私どもが、その念仏の心で自らを覆い尽くすようになってくれたら、また平生を取り戻すことができるだろうと考えております。
異常の中で平生を早く取り戻そうということに深く思いを致し、自らを戒め粛然と己を守って、周りに影響がないようにしていきたいものです。
こうした心を念仏のうちに持って、平生を取り戻していこうとするその祈念が、祖師の恩徳に報い、また私たちをも生かすことになるのではないかと思います。
令和2年4月13日
浄土宗総本山知恩院第八十八世・浄土門主
伊 藤 唯 眞
国宝御影堂落慶御遷座法要之疏(PDF)