大正時代の大阪府知事林市蔵は、ある日の夕方のこと、理髪店で調髪のあいだ、鏡に写る街頭の様子をみるともなく見ていた。すると、小さな子供を背中に負うた夕刊売りのまずしげな婦人の姿が目に止まった、どうも気になるので事情を尋ねてみると、日雇いの夫が怪我をしたので、その日の暮しが立ちかねるという…。
その夜の知事は食欲が無かった。「ああした人達がきっとこの大阪にたくさん居るに違い無い。こうした人たちをなんとかしなければ、知事たる私は、ぬくぬくと柔らかなふとんにくるまって寝ているわけには行かぬではないか……」
林市蔵知事は早速、府の顧問小川滋次郎博士に研究を依頼し、府行政に民間人の奉仕を加えた大阪府の民生委員制度(当時の方面委員制度)が始まり、岡山県で始まっていた済世顧問制度などとも呼応し、やがて全国に広がっていったのでありました。
民生委員・児童委員は厚生労働大臣・知事に委嘱された者が、全国で約21万人が活動しています。大正6年に岡山県で済世顧問制度がはじまり、戦後26年、社会福祉事業法により80年の歴史を刻み全国民生委員・児童委員協議会として全国津々浦々、日々活動を続けております。各市町村別に民児協を結成し地域と密着した福祉活動を続ける団体です。その中で今日まで多くの浄土宗教師寺族もその活動の中心的存在となりご尽力頂き社会福祉にその手を伸ばして頂いてまいりました。
そんな中で公益教化事業奨励規程に基づき、早くからその結成が望まれていたのですが平成10年6月26日に浄土宗民生委員・児童委員協議会として宗祖の精神を体し社会奉仕の理念をもって、社会福祉の増進に寄与する事を目的として発足の声が高まり結成されました。先ずは会員の把握、募集に始まり支部結成、会員約180名で活動を続けておりますが何分、広範囲で会員数が少ないため、本会独自の活動としては、年1回の中央研修会での研修やケース研究・機関誌『ひろば』を発行しての個々の情報交換・支部研修(殆どの地区が保護司会と連携をとって共同開催をしています)が中心となっていますが、会員個々の活動は日々地域に密着した中で勤めておりますので、その中に宗祖の意を体し浄土宗が渡辺海旭・長谷川良信・矢吹慶輝師をはじめ先徳諸師の尽力により福祉宗団の伝統をより広めるために地道な活動を続けたいと思っております。
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中央研修会 |
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