浄土宗ニュース:2019年04月

寄り添い ともに歩んでいくために

浄総研がLGBTを考えるシンポ

 浄土宗総合研究所(藤本淨彦所長。以下、浄総研)が2月25日、※LGBTエルジービーティー(性的少数者の総称のひとつ)当事者の声を聴き、理解を深めるための公開シンポジウム「法然上人にみる平等思想―LGBTを考える視座として」を大本山増上寺(東京都港区)で開催した。
 近年、テレビや新聞などで取り上げられることの多くなったLGBTということば。国連が2015年にLGBT当事者に対する暴力や差別を終わらせると声明を発表したのをはじめ、自治体やさまざまな団体が理解を示し、解消に努めようと活動をしている。
 浄総研では昨年、寺院が誰にとっても足を運びやすい場所となることを目標に、そこにいる僧侶がLGBTの方にとって安心できる存在となる一助とすべく、現状や寺院の対応についてまとめた冊子『それぞれのかがやき・LGBTを知る』を刊行している。
 シンポジウムではLGBTを考える前提として、法然上人の平等思想について浄総研研究員の林田康順師が基調講演を行った。
 林田師は「阿弥陀仏が身分や性別など、あらゆる立場を超えて救ってくださる。法然上人はあらゆる差別を容認しない絶対的平等の立場を取った」と説明、「私たちが差別の心を完全になくすことはできないが、阿弥陀仏の慈悲の心を感じる念仏者は、LGBTなどで悩む人がいれば、それに寄り添っていくべき」とし、最後は、極楽浄土の池では青・黄・赤・白の蓮がそれぞれの色で光輝いているという経典の一節をあげ、「極楽の蓮のように、それぞれが個性を輝かせられる平等な社会を目指し、努力していくことが私たちにとって大切なこと」と締めくくった。
 続いて、当事者の立場から浄土宗僧侶でメークアップアーティストの西村宏堂師が登壇。人生で直面した困難、その中で自分らしい生き方を見つけるまでの道のりを語った。西村師は、「世界には、宗教や文化の問題から自分の存在を肯定できない人も多くいます。私は、そのすべての人がありのままでいることが正しいということを、浄土宗の教えを通じ伝えていきたい」と述べた。
 パネルディスカッションでは3名のパネリストがそれぞれの立場から、LGBTの問題や、ともに歩んでいくための方法について発表。浄土宗僧侶、当事者、他宗の僧侶など、会場に集まった約160名が、真剣な眼差しで話に聞き入っていた。
※LGBTとは…性的少数者(セクシュアル・マイノリティー)の総称のひとつ。Lはレズビアン(Lesbian=女性同性愛者)、Gはゲイ(Gay=男性同性愛者)、Bはバイセクシャル(Bisexual=両性愛者)、Tはトランスジェンダー(Transgender=心と体の性が一致しない人。既存の性の区別に疑問を付し、それを超えようとする人)の頭文字を取ったもの。

写真左:会場からの質問に答えるパネリスト。質問は教義や自身の悩みなど、多岐にわたった。

写真右:スピーチをする西村師。浄土宗僧侶になることに迷いを感じたときもあったという。

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関連記事

性の尊重―― 自分らしく生きられる社会に

 シンポジウムの後半に行われたパネルディスカッションでは、日本キリスト教団の牧師・中村吉基氏、浄土真宗本願寺派の僧侶・中平了悟氏、浄総研研究員の石田一裕氏が登壇。それぞれの宗教・宗派の立場から考えを述べた。
 はじめに中村氏が、キリスト教の立場から当事者との向き合い方を提言。イエス・キリストは、悩む人がいればすぐにその人のもとに駆け付けたことを引き、「LGBTの困難に直面する人をはじめ、困っている人がいれば、そこに行って寄り添う、これがキリスト教における人との距離感です」と述べた。
 続いて発表した中平氏は、自身が副住職を務める寺院で、社会問題について話し合うイベントを行うなか、LGBTの当事者はじめ多くの人と接し、使うことばや行動が変わったと語った。同氏は、「実際に一人の人として当事者の方と関係を持つことで、『あの人はもしかしたらこの言葉で傷つくのではないか』など具体的に想像ができるようになった。皆さんも、機会があれば実際に当事者の方と話すことで、想像力を広げていってほしい」と語った。
 最後に石田氏は、仏教者がどのように平等を実践すればよいかについて発表。 釈尊の「生まれによってバラモン(インドの身分制度で最も高い身分)になるのではない。行為によってバラモンになるのだ」との言葉を引用し、仏教は行いによって評価が決まる平等主義を主張するが、一方で差別が起こる前に防ぐなどの積極性には乏しく、社会の差別的な思想が流れ込むこともある、とした。その観点を踏まえたうえで石田氏は、「仏教における平等思想を社会に認めてもらうためには、適切な知識で、悩む人を助けるという慈悲の実践が重要」と提言した。
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 パネルディスカッションでコーディネーターを務めた浄総研の工藤量導研究員は、本紙の取材に対して、「宗教・宗派の違いがあっても、絶対的な存在である仏さまや神さまが、性差を超えた〝フェアなまなざし〟で私たちを見守り、寄り添ってくれているとの考えは同じ」としたうえで、「私たちは、平等の思想が目いっぱいつまった法然上人の教えをもとに、誰もが自分の性を尊重され、自分らしく生きられる社会の実現を共に考えていきたい。LGBTの当事者が抱える困難や生きづらさの実情を知り、学ぶことはその第一歩」と答えた。
*浄土宗総合研究所では、LGBTの現状や当事者の声をまとめた総研叢書『それぞれのかがやき:LGBTを知る』をホームページで公開中。アクセスは、「浄土宗総合研究所」で検索。または下記QRから。

写真:QRコード

寺院と病院が連携

訪問看護ステーション開設へ 大阪市・願生寺

 大阪市住吉区の願生寺住職・大河内おおこうち大博だいはく師が、大阪や兵庫で在宅訪問診療を行う(株)ナースケアと連携し、訪問看護ステーションを今年中に立ち上げると発表、3月2日、同寺で説明会を開いた。
 大河内師は緩和病棟などで終末期患者の心の内に寄り添うスピリチュアルケアのほか、遺族の悲嘆ひたんに向き合うグリーフケアを行うなど、医療・福祉のいのちの現場で長年にわたり活動。大正大学、上智大学などで、医療・福祉現場で活動する若手宗教者の養成にも当たってきた。
 国内の高齢化背景を鑑みると、団塊の世代が後期高齢者に入る2025年には高齢化率が30%を超える、いわば〝超々高齢化社会〟に突入。40年代には〝超多死社会〟を迎え、病院のベットは満床となり、自宅で最期を迎える人が急増することが予測されている。
 国は25年を目途に、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築を推進しているが、今回大河内師が目指すのはこのシステムの中心に寺院を置くことだ。
 具体的には願生寺の近隣に訪問看護ステーションを設置し、登録している※臨床宗教師・仏教師やスピリチュアルケア師がニーズに応じて各家庭に訪問、傾聴けいちょう活動などを行う。また、その中間にスピリチュアルケア在宅臨床センター(NPOを想定)を設立して在宅派遣の差配を担い、助成・寄付などの資金面での調整も行う仕組みだ。
 今回の設立に関して、同じく連携をとる医療法人社団日翔会の渡辺克哉理事長は「私たち医師は医療の面では患者さんを診ることはできるが、心の部分に向き合う時間、ノウハウがなかった。遺族の方々にも関わる必要性を痛感しています。この両面に対応する僧侶の方々に関わってもらわないと真の『終末期医療』が完成しない」と語る。
 大河内師は「月命日のお参りやお盆の棚経など、僧侶はその方の自宅に上がり、人生について話し合う機会が多い。医療者と連携することで、それが医療や死生観など複合的な支援につながることができます。また、携わった患者さんの遺族会など、寺院が継続性をもって地域の交流の場にもなりえる」とし、今後は子ども食堂などの育児支援につなげる構想もあるという。超々高齢化を目前に寺院と医療の連携による、生と死を超えた支援に期待がかかる。
※臨床宗教師・臨床仏教師・スピリチュアルケア師とは…被災地や医療機関、福祉施設なと゛の公共空間て゛心のケアを提供する宗教者。臨床宗教師は一般社団法人日本臨床宗教師会による認定制度で仏教、キリスト教、神道など様々。臨床仏教師は公益財団法人全国青少年教化協議会付属の臨床仏教研究所が認定する仏教者。スピリチュアルケア師は同様の主旨だが、特に宗教性を持たない。日本スピリチュアルケア学会による認定制度。

写真:渡辺理事長(左)と大河内師

「お福わけプロジェクト」第2段

災害備蓄米をシングルマザーに

 大本山増上寺(東京)が、保管している災害備蓄米を熊本市内のシングルマザー家庭に届けるため2月22日、職員らが同市の尚絅しょうけい大学で、仕分け作業などを行った。
 この活動は、正月にご本尊にお供物として供えた鏡餅を生活困窮家庭に届ける「お福わけプロジェクト」として昨年始まり、今回は第2段。
 増上寺は東日本大震災以降、非常時用として備蓄米約6300食を保管。それらが6月に賞味期限を迎えるため、同寺の内田義之施設課長が「困っている人のために役立てたい」と、浄土宗総合研究所で社会福祉や災害対策の研究を行う宮坂直樹研究員に相談。熊本地震の支援で縁のあった母子家庭支援団体「シンママ熊本応援団」(佐藤彩己子あつこ団長)に所属する27世帯へ届けることとなった。
 備蓄米は湯や水を加えることで食べられるが、「平時でもおいしく食べてほしい」と、宮坂師が※浄土宗宗門学校の淑徳大学栄養学部に活用レシピの考案を依頼し、ライスコロッケなど、工夫を凝らした12品のレシピ集を作成。
 仕分け作業には、内田課長、宮坂師、尚絅子育て研究センター増淵千保美センター長と学生のほか、「各地から届く物資とその想いを感じてほしい」との佐藤団長の想いから、支援を受けている母親らも加わった。
 備蓄米400食、レシピ集のほか、フードバンクなど各地の支援団体から寄せられた食品や生活用品をひと家庭分ごとに箱詰めした。
 ともに仕分け作業をした母親は「レシピを参考に子どもと一緒に作ってみたい」と喜びの表情を見せた。
※浄土宗宗立・宗門学校とは…浄土宗の教えを建学の精神教育の理念に掲げ、浄土宗と連携する学校。小・中・高、大学など、全国に合わせて43校ある。

写真左:備蓄米を仕分けする学生と内田課長(右)と宮坂師。そのほか、お菓子や果物、生活用品を一緒に入れて発送した。

写真右:お福わけプロジェクト、増上寺、淑徳大学についての説明が書かれた紙をお守りの形に折り、その中に12品のレシピ集を入れた。

2万人の想い 東北の被災地に

和顔地蔵わげんじぞう大川小で遺族見守る


 東日本大震災から8年。3月11日、被災地では追悼法要が各所で勤められた。児童74名が亡くなった大川小学校(宮城県石巻市)や津波被害を受けた照德寺(仙台市)などの祭壇には遺族を優しく見守るお地蔵さまの姿があった。
 高さ40㌢ほどの地蔵像はフィギュアなどにも使用されるFRP製で、仙台市の成覺寺・中村眞英しんえい住職が慰霊と復興祈願として震災の翌年に制作。「和顔地蔵」と名づけ、被災地に想いを寄せて多くの人に頭をでてほしいと、全国での巡行を実施。平成26年8月、初めて設置した総本山知恩院和順会館では、その趣旨が分かると多くの参詣者が頭を撫でていたという。浄土宗寺院(総・大本山を含む約百カ寺)や保育園などを巡ったほか、東大寺、浅草寺など他宗の寺院も賛同した。
 4年かけ、被災地への想いを込め頭を撫でた人は約2万人。巡行を終えた和顔地蔵は大川小にほど近い大忍寺に義捐金と共に奉納され、大川小で営まれた追悼法要にもまつられた。
 中村師は「古来の巡行と撫でるという新しい形が多くの人々に受け入れられ、涙あり、和顔えがおありの祈りに繋がったのでは」と語った。

写真:大川小で営まれた追悼法要にも祀られた

お知らせ

春爛漫のなか中将姫命日法要

當麻寺練供養会式 4/14

 中将姫ちゅうじょうひめ伝説で知られる奈良県葛城かつらぎ市の當麻寺奥院おくのいん(川中光教住職)が4月14日、藤原鎌足のひ孫・豊成とよなりの娘の中将姫が極楽浄土へ迎えられる様子を再現した「當麻寺練供養会式たいまでらねりくようえしき」を営む。継母ままははに妬まれ、とある山で隠棲生活を送ったのち出家した姫は29歳の春、『観無量寿経かんむりょうじゅきょう』に説かれる極楽浄土の様を當麻曼陀羅たいままんだら(国宝)として一晩で織り上げた後、往生したと伝えられる。当日は境内の西に位置する本堂を極楽浄土に、東に位置する娑婆堂しゃばどうを現世に見立て、その間に架けられた橋を菩薩の面をつけきらびやかな衣装をまとった人々が練り歩く。昨年までは5月に行われていたが、今年から4月に変更となり、中将姫の命日(3月14日)に、より近くなった。この時期は桜も見ごろ、ぜひ足を運んでみたい。
(写真)=先頭の菩薩は蓮台に乗せた中将姫の小像を掲げて歩く

【日時】4月14日(日)午後4時から
【開場】奈良県葛城市當麻1263
【問合せ】0745(48)2008
【アクセス】近鉄南大阪線「当麻寺駅」下車徒歩15分
 🏠ホームページ

写真:先頭の菩薩は蓮台に乗せた中将姫の小像を掲げて歩く

開宗850年記念事業「てらギャラ」

和歌山でプレ開催 全国展開へ

 2024年、法然上人が浄土宗を開かれてから850年を迎える。浄土宗(豊岡鐐尓宗務総長)では「お念佛からはじまる幸せ」をキャッチコピーに、お念仏へのご縁を深める契機にすべく、さまざまな行事を予定している。
 記念事業を進めるにあたり、プレ開催として2月26日から3月13日にかけ、和歌山県内の4カ寺と和歌山駅前のJAビルで、教区内寺院所蔵の寺宝などを展示する「てらギャラ」を実施した。
 てらギャラは「お寺でギャラリー」を略した造語で、各寺院の寺宝を教区単位で一堂に展示し、檀信徒や地域の人々に仏教への親しみ、地域寺院の魅力を再発見してもらおうというもの。
 初日の26日、「地獄・極楽図」などの掛け軸や、僧侶が身に着ける袈裟けさや衣、さらには総本山知恩院所蔵の国宝「法然上人行状絵図ぎょうじょうえず」(複製)を展示。木魚や鐘などの仏具は自由に打ち鳴らすことができる体験コーナーとした。百貨店やオフィスが並ぶ和歌山駅前(JAビル)という立地もあり、家族連れや若者、昼休みにはサラリーマンが訪れ、興味深そうに見入っていた。
 この後、13日まで善福寺(和歌山市)、稱名寺(有田市)、浄恩寺(田辺市)、済広寺(美浜町)の各会場で開かれ、延べ700名が来場した。
 今後は全47の教区で各教区独自の展開を予定しており、各地域ごとに特色のある取り組みが見られそうだ。開催予定は浄土宗ホームページで随時告知する。

写真:木魚を体験する親子連れ(26日・JAビル)

定期宗議会で宗務機構改革決議

4月から「3部1室」体制に

 3月4日から8日まで、京都市の浄土宗宗務庁で、各教区選出の70名の宗議会議員により構成される、第120次定期宗議会(木村弘文議長)が開催された。
 今議会では宗務機構改革についての議論が交された。これまで京都宗務庁に総務局、教学局、財務局、総長公室、人権同和室、開宗850年準備事務局、東京宗務庁に社会国際局、文化局、災害対策事務局、社会福祉推進事務局を設置していたが、京都に総務部、教学部、企画調整室、東京に社会部とする「3部1室」体制に4月からの移行が決まった。
 なお、本紙を編集・販売する浄土宗出版は社会部の所管となり、メールアドレスがsyuppan@jodo.or.jpに変更となる。

写真:議会で答弁する豊岡鐐尓宗務総長

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          仏教の話をしよう。』
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