俳壇・歌壇

令和3年7月

浄土歌壇

堀部知子 選
投歌総数143首

エプロンの蝶蝶結びを結び終えゆっくり動くわたしのひと日兵庫 堀毛美代子
この一首からは、大切なひと日のスタートがストレートに伝わる。上句の「蝶蝶結び」が効果的。
病持つ身であることもご縁にて人へのやさしさ習ふと知れば東京 蚫谷定幸
謙虚な人柄が偲ばれる。下句にそれがリアルにあらわれていて、結句を上手に納め得た。
浄土宗新聞配る春のうらら檀家の笑顔われを励ます三重 奥田悦生
詠われているご本人の様子がよく伝わり、具体的に詠われているなかで「春うらら」が効いている。
祈りには送信ボタンは要りません届きますよと静かに僧侶は静岡 河合しのぶ
杖引きて八十路の妻と三千歩病に負けじと今日もまた行く岡山 矢川忠彦
逃げ水を追っかけまた追っかけて下校途中の子らの喚声大分 小林 繁
日に一首の作歌の旅の遠ければ時折休み楽しむ八十路福岡 古賀悦子
待望の曾孫つぎつぎ話をす泣く子笑う子日々を楽しむ岡山 小川信夫
長病みも忘れる程に癒えて今日土手に膝つき蓬を摘みぬ滋賀 村木敬子
リハビリ院の小さき池に新緑写り鯉の稚魚らは元気に泳ぐ岡山 谷川香代子
いつしかに降り初めし雨は音もなく土塀に画く逆さのグラフ三重 瀧原信善
コロナ禍の数字は今日も多くして一人住む息子の暮しを案ず神奈川 相田和子
ぴかぴかのランドセル背に白い靴緑の道を子らは連れ建つ愛知 横井真人
老木の楓の子となる若苗は皐月の風に揺れて頼もし埼玉 石村和子
新緑の奥津城に人見えず甍のごとく墓石照りいつ兵庫 斎藤一義
添削三句目「人なくて」続句「照りたる」を直す。

浄土俳壇

坪内稔典 選
投句総数191句

立ち直る雨後の私とチューリップ福岡 谷口範子
雨に濡れて立つ「私とチューリップ」が瑞々しい。リズムも簡潔で快いです。
初蝉や窓は二階の東向き大阪 津川トシノ
蝉を聴くにはこの場所じゃなくては、ですね。私の窓は二階の南向き、道路に面していて車がうるさい。でも、クマゼミはよく聞こえます。
午前五時筍掘りのお誘いが埼玉 須原慎子
誘いに乗りましたか。朝掘りの筍、うまかっただろうなあ。「午前五時」とまず言ったところ、意外性があってとってもよい。
春風や駆け出して行く白い靴愛知 横井直人
塔見えるげんげ田に置く魔法瓶鳥取 徳永耕一
ものの芽や土の匂ひの妻帰る大阪 西岡正春
筍を貰ひて木の芽摘みに行く愛媛 千葉城圓
春風を独り占めして農作業和歌山 福井浄堂
水底に遊ぶ浮雲花菖蒲群馬 木村住子
鮎に聞く矢作の橋の野武士談愛知 鈴木吉保
筆順の気になる「粛」や暮の春石川 五十嵐一雄
雨に咲く岩手の花は桐の花岩手 菊池伉
おにぎりを分け合うふたり青葉光栃木 伊藤和子
分け入りて花菜畑の蜂発たす青森 中田瑞穂
開け放す八百屋の梁の燕の巣神奈川 中村道子
江戸や肥後伊勢も競ひて菖蒲園大阪 岡崎勲
柿の葉やサバ寿司作る母がいた奈良 中村宗一
爪立ちて手繰り寄せたる花あけび石川 松平紀代子
ペコちゃんのセーラー服も更衣東京 山崎洋子
光明寺日曜法話初音かな神奈川 佐藤仲信
たんぽぽのぽぽを捜しに旅に出る大分 小林客愁
草餅の粒あんが好きこしあんも兵庫 堀毛美代子
添削「草餅や粒あんもこしあんも好き」が原句。語順を変え、リズムを整え、草餅をうまそうにした。

ページのトップへ戻る