2025年1月:新たな芽の出る年に
一年の計は元旦にあり。一日の積み重ねが一年となり、その一年が人生を形作ります。その区切りとなる元旦に、志高く目標を立てることが大切だと昔から伝えられてきました。
しかしどうでしょうか。自分との約束を何度も破り、計画倒れになってしまう。私たちは毎年目標を立てても、日々の誘惑や慣れた生活に流されがちです。
私は、大学生の時に花粉症を発症し、以来毎年のように鼻水が止まらず、目は痒くてたまらない状態が続いています。その症状が風邪を引き起こし、体調を崩すこともしばしば。症状が出る前に薬を服用すれば軽症で済むと聞き、来年こそは花粉が飛ぶ前に対処しようと決心するのですが、翌年にはまた忘れてしまい、症状が出てから「ああ、心に決めたのに」と後悔することになります。花粉症なら笑い話で済みますが私たちの生と死の問題ではどうでしょうか。いつ命を終えるか分からない儚い私たちが死後どこに行くのか定めていたのに、計画倒れしてしまうことは大変恐ろしいことと思いませんか。
法然上人は在家信者の質問に答えた「十二箇条問答」のなかで、「念仏して往生せんと心ざして念仏を行ずるに、凡夫なるがゆえに貪瞋の煩悩おこるといえども、念仏往生の約束をひるがえさざれば、かならず往生するなり」と述べられました。
それぞれの事情でお念仏を絶え間なくとなえることができない私たちは、阿弥陀さまの願いを守れず、計画倒れになってしまいがちです。しかし、さまざまな煩悩が湧き上がってしまう凡夫の私たちでも、阿弥陀さまの救いを信じ、お念仏をとなえ続ける念仏往生の約束(決意)をひるがえさなければ、必ず阿弥陀さまは救ってくださるのだとお示しくださったのです。
私たちの一年の目標は、立てたその瞬間だけでなく、途中で何度も自らを励ましながら、自分との約束をひるがえさないように、改めて進むことが大切です。私たちの生と死の問題も、ふと極楽へ往生したいと思った時だけでなく、お念仏をとなえながら何度も自らを励まし、阿弥陀さまとの約束を守るために、あらためて進むことが大切です。それが凡夫の私たちが「新たな芽の出る年に」できる鍵ではないでしょうか。
(大分県佐伯市 潮谷寺 黒木祐)