今月の言葉

2025年2月:ほのかな光で花は開く

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ほのかな光で花は開く

A flower will bloom even with the faintest of light.

東京のお寺のご老僧にこのようなお話を聞いたことがあります。

第二次世界大戦終戦後、疎開先から東京に帰ってくると一面が焼け野原になっており、住まいでもあり、何百年もの歴史があったお寺も燃えてしまい、遊びに行った近所の友だちの家や、よくおつかいで行った八百屋さんもすべて燃えてなくなり、子どもながらに絶望したそうです。

しかし、瓦礫の下からご本尊の阿弥陀如来像が無事に出てきた瞬間に希望を感じ、お寺は復興できるし、この国も大丈夫だと思ったそうです。その日から気持ちも新たに阿弥陀さまを信じ、お念仏をおとなえし続けたところ、その阿弥陀さまは、やがてお檀家さまや近所の信仰のよりどころである希望の光となり、お寺も復興していったとおしゃっていました。

戦後80年、私たちの生きる現代も大変な時代を迎えようとしています。世界に目を向ければ、戦争や紛争が各地で起こり、罪のないおびただしい数の人々の命が失われています。日本でも信じられないような凶悪事件が起きていますし、天災地変など、いつ何が起こっても不思議ではありません。

法然上人は「平生の時、照らし始めて最後まで捨て給うなり」とお示しになられました。これは、苦しみの世界を生きる私たちも、常日ごろ、心の底から阿弥陀さまを信じて、「南無阿弥陀仏」とおとなえすれば、最期を迎える時も、阿弥陀さまは私たちを見捨てず、必ず西方極楽浄土にお救いくださるということ。阿弥陀さまが照らしてくださる慈悲の光は、かつてご老僧が焼け野原でご本尊の阿弥陀さまから感じられたような希望の光と同じものといえましょう。

また、できるだけやわらかな顔で優しい言葉で相手に接するというような、日々の生活での小さな善行。こうした小さな善行がやがて他の人に良い影響を与え、大変な時代、迷いの世界を少しでも良い世界に変えていくきっかけになるかもしれません。

ほのかな光ともいえる日常の小さな善行。それを積み重ねていくことが、希望への確かな光となり、いつかは花を咲かせることになるでしょう。日々、阿弥陀さまを信じお念仏をおとなえし、毎日をできるだけ「明るく、正しく、仲良く」過ごしていきましょう。

(長野市元善町 浄願坊 若麻績大成)