2025年9月:備えは今から
「泣いていいんだよ」という歌い出しで始まる菅田将暉さんの『虹』という楽曲があります。私の知人に、サビの部分で「一生そばにいるから 一生そばにいて」と歌う彼の声に涙する方がいます。
大切な人を亡くしたらいろいろな反応が出ます。悲しみや後悔、自責の念、眠れない、孤独感、「なぜ」という問いなど、どれも自然な反応ですし、人によって反応の出方は違います。自分のなかでも時と場合によりさまざまな反応が入り混じるものです。
昔から「時薬」とか「日にちが薬」と、時間が経てば乗り越えられるようなことを言う人もいますが、必ずしも時が経てば回復するというものでもありません。
普段は忘れているのに、ふと亡き人のことを思い出して身体や心の調子が悪くなることがあります。亡くなって何年経っても、その人の命日や誕生日などが近づくと、不意に臨終の場面を思い出したり「もういないんだ」と孤独感や喪失感に苛まれて憂鬱になり、しんどくなることがあります。それはどこかおかしいわけでも病気でもなく、自然な反応です。「命日反応」や「記念日症候群」などと言われるものです。
対処方法としては、無理をしないこと、休息をとって気分転換すること、あるいは故人を偲んだり誰かに話を聴いてもらったりすることで楽になることがあります。もう一つ、私はそこに「お念仏を手向ける」ことを加えることをお勧めしています。
亡き方のためにとなえるお念仏というのは、大切な方に今でも私たちができることです。日々の暮らしで亡き方のことを思い出すたび手を合わせてお念仏を手向ける。このお念仏を続けていくことで、私たちの中に積み重なっていくもの…それは、阿弥陀さまからのお慈悲をいただくことです。
最初に記した方は、大切な人を亡くして5年が過ぎています。毎年反応が出ていますが、そのたびにお念仏を手向けていらっしゃいます。
時を経ても寂しさや悲しさはやってきますが、それでいいのです。命日が近づくと反応が起こることを知っていれば、いざ反応が出ても軽く済みます。加えてお念仏を重ねれば、さらに軽くなるでしょう。まだの方も今からお念仏で備えておきましょう。
(広島県広島市 妙慶院 加用雅信)