今月の言葉

2026年2月:感謝も不満も同じ口から

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2026年2月:感謝も不満も同じ口から

Before you decide what is good or bad, remember to keep an open mind.

昨年1月、私が会長を務めている石見教区浄土宗青年会で念仏行脚を行いました。これは石見教区にある浄土宗二祖聖光上人に由来する大願寺と三祖良忠上人に由来する良忠寺の間を、法灯を持ち念仏をとなえながら歩き、縁を結ぶものです。
 法然上人の念仏のみ教えを託した法灯を頂いて行った念仏行脚、浄土宗開宗850年慶讃事業の法灯リレーに着想を得た企画で、法然上人の念仏のみ教えが、二祖、三祖へと受け継がれる様をイメージし、また令和6年の能登半島地震を念頭に置いた托鉢でもあり、大願寺から良忠寺までの約80キロを浄財を募りながら2日かけて歩きました。
 開始から10キロあたりでは、まだまだ余裕がありました。しかし、30キロに達するとそれもなくなり、徐々に運動不足の足を引きずるような歩みになります。頭の中を巡っているのは「土がどこかにないだろうか」というものぐらいでした。硬いアスファルトの上を歩くよりも、少しでもクッション性のある地面を探していたのです。
 こうなると口をついて出そうになる言葉は不満ばかりです。自分を奮い立たせるような言葉は思い浮かびません。お念仏をおとなえしているので実際に不満を口にすることはありませんが、仮に本心の会話をしても、自分の体面を保つための、自己都合の言葉で他者を不快にさせていたと思います。
 しかし、その心が様変わりすることもありました。それはお檀家さんを中心とした、地域の皆さまの姿です。沿道やご自宅前で手を合わせている姿が、なんとか体の痛みを堪えて頭を下げて感謝の言葉を口にし、あるいはお念仏をはっきりとおとなえするよう、姿勢を正すきっかけとなりました。もちろん、不満が解消して心が完全に清浄になったとは到底言えません。しかし、少なくとも口から出たのは自己都合でない本心からの感謝の言葉でした。
 ともあれ、私たちは約80キロの念仏行脚を完遂できました。感謝も不満も同じ口から出るものです。大変な時はつい不満を口にしてしまいがちですが、沿道や自宅前に立ち、手を合わせ私たちを支えてくれた方のような、多くの方々に支えられているという事実に目を向けることで、より多くの感謝の言葉が出るようになるのではないでしょうか。
 (島根県大田市 大願寺 山崎拓馬)