2023年2月:今できることを少しずつ
私が住む北陸・富山県は日本有数の豪雪地帯として知られています。昔は2メートル近く雪が積もり、家の2階から出入りしたこともあったそうです。ここ数年は昔ほどではないものの短期間で1メートル近くの積雪を観測することもあり、北陸の冬の厳しさを感じています。
たくさんの雪が降るとお寺は大変です。特に、本堂の屋根に積もる雪が凄いのです。屋根の雪は雪そのものの重さで圧縮され、固く重たい雪となって落下し、時に玄関の前を塞いでしまうこともあります。屋根の雪が全部落ちてから山となった雪を動かそうとしても、とても困難です。ですから、私の祖母は屋根の雪が少しでも落ちて積もると、晴れ間を見ては、スコップで雪山を少しずつ崩し、次に雪がたくさん降ったとしても影響があまりでないようにしていたのです。事態が大きくなってから対応することは大変ですが、そうなる前に小さなことでも自分ができる範囲でやり続けることで、成果が出ることを学びました。
法然上人は「一枚起請文」で「ただ一向に念仏すべし」とお示しになっておられます。また上人は、お念仏は「誰でも」「いつでも」「どこででも」できる簡単な行ではあるけれども、南無阿弥陀仏の六字に阿弥陀如来の功徳が全て収められており、厳しく難しい修行ができない私たちにとっては、最期のとき必ず往生浄土がかなう最も優れた行である、とおっしゃっています。しかし私たちの生活を省みた時、仕事や家事に時間を取られてしまいがちで、お浄土から心がはなれ、お念仏がなおざりになっていないでしょうか。今は元気で、健康だから大丈夫と思うかもしれませんが、新型コロナウイルスのまん延や昨今の世界情勢から実感することがあるように私たちの生きるこの世界に「絶対」はありません。
だからこそ私たちは、平生の時から少しずつ最期に向けた準備をしておく必要があります。すなわち、私たちは日常のなか少しずつでもお念仏をおとなえすることで、お浄土に心を向けることが大事なのです。
暦の上では春を迎えました。まだまだ冬の厳しい寒さは続きますが、お念仏をとなえながら、暖かな春の訪れを待ちたいものです。
(富山県射水市 曼陀羅寺 眞岸孝憲)