今月の言葉

2023年6月:こころ耕す なむあみだぶつ

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こころ耕す なむあみだぶつ

Each time you chant nembutsu,your faith in Amida Buddha deepens.

今年3月に行われた野球の世界大会であるWBCをご覧になられましたか。優勝した日本代表の活躍は、私たちに多くの感動を与えてくれました。話題の中心はMVPに輝いた大谷翔平選手。天性の才能に加え、名声を手に入れても決しておごることなく黙々と練習をこなす姿勢は、多くの人々に称賛され、長期的な視野で目標に向き合う継続力が、歴史的偉業の達成に繋がったといわれます。
 よく「継続は力なり」ということわざが使われますが、何事も続けていくことが簡単ではないからこそ、多くの場面で使われるのでしょう。人の心は移ろいやすく、一度決意したことでもそれを続けるのは大変難しいものです。法然上人の御法語に、「信をば一念に生まるととりて、行をば一形にはげむべし」(『禅勝房にしめす御詞』)とあります。これは、一度のお念仏で阿弥陀さまの極楽浄土へ往生できると心に信じつつ、お念仏の修行は一生涯にわたって励みましょうという意味で、阿弥陀さまを信じる心、お念仏をおとなえする修行、どちらも継続することが大切であると示されました。
 私は子どもの頃、夜の家族間のテレビチャンネル争いに敗れると、祖母の部屋で見ていました。テレビに夢中な私の横で、就寝時間の早い祖母はその準備をするのですが、毎回必ず本堂と墓地が見渡せる部屋へ移動し、「なむあみだぶつ、なむあみだぶつ」とおとなえしてから自室に戻り、そして布団に入ってからもう一度お念仏をおとなえすることを日課としていました。
 あるとき、その日課に誘われ、「阿弥陀さまやご先祖を想いおとなえするお念仏によって、いつも自分たちはその方々に見守っていただいているんだと感じ、明日への活力が湧いてくるんだよ」と教えてくれました。祖母にとっては、日課のお念仏をおとなえする一声一声に、自然と阿弥陀さまやお浄土への想いが育まれ、その想いが次の一声一声に繋がっていったのでしょう。
 人の心はよく田畑に例えられます。定期的に耕さなくては、冷たく固まってしまいます。「阿弥陀さまを信じる心、口にとなえるお念仏、どちらも車の両輪のように共に回りながら往生への道を進んでいく。その中に、心豊かな日々を過ごせる」そんなお念仏の生活に励んでみませんか。
(岐阜県岐阜市 本誓寺 淺野真義)