今月の言葉

2023年7月:当たり前と思うあやうさ

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当たり前と思うあやうさ

Be aware that every day consists of delicate balancing.

ある日のコンビニでの出来事。私がレジに並んでいた際、男性の怒鳴り声が聞こえてきました。「普通、客がアイス買ったらスプーンも付けるだろ!」と、レジ袋の中に、スプーンが入っていなかったことに腹を立てているようでした。このような他人の姿を見ると、「そんなに怒らなくても良いのに」と感じてしまいますが、我が身を振り返るとどうでしょう。自分自身にも「自分にとっての当たり前」を他人に押し付けてしまう瞬間があるのではないでしょうか。
 私自身、他人が自分と同じ価値観を持っていると勝手に期待をしてしまうことがあります。例えば「朝に歯を磨くこと」は私にとって当たり前ですが、「朝はガムだけで済ませる」という人は私の当たり前とはかけ離れていて、「そんなのおかしい」という印象を受けてしまいます。しかし、相手を理解しようとせず、「歯磨きしなよ」と指摘することは、相手にとってみれば「余計なお世話」で、人を傷つける言動につながることもあります。
 お釈迦さまは「青色青光・黄色黄光・赤色赤光・白色白光」というお言葉を遺されました。これは極楽浄土に咲く蓮の花の様子を語ったもので、「青色の花は青色の光を、黄色の花は黄色の光を、赤色の花は赤色の光を、白色の花は白色の光を放つ」という意味です。転じて、私たち一人ひとりが、それぞれ異なる色を持ち、発する光の色が異なることを表しているとされます。
 お釈迦さまのこのお言葉を見ると、考え方や価値観は人によって色々であることが自然なのだと感じさせられます。気の合う友人であっても、血のつながる家族であっても、考えや好みが同じであるとは限りません。自分が「当たり前」と思っていることが他人にとっては「当たり前でない」こともあることを受け止め、相手が「どうしてそのように思うのか」と関心を持ち、少しでも他人を理解しようとする意識が大切なのではないでしょうか。
 いわば、「当たり前」とは「慣れ」です。日常的に「何も言わなくても」スプーンを入れてくれる配慮を「当たり前」と思わずに感謝することは大切です。生活の中で慣れて、見えなくなった「当たり前」を見つけ、感謝することで、より温かな毎日を過ごせるような気がします。
(東京都日野市 大昌寺 杉浦靖隆)