今月の言葉

2023年8月:涼しさ奏でる鈴の音

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涼しさ奏でる鈴の音

On hot days in the summer,refreshing breezes from the Pure Land come to cool us.

今年の夏は特別暑い、と何年も口にしている気がします。猛暑日に冷房の効いた室内と、屋外の出入りを繰り返すとドッと汗をかき、くたびれます。冷蔵庫の出入りを繰り返す麦茶もひょっとするとお疲れかもしれません。乾いた喉を潤す冷たい麦茶、日陰に吹く清々しい風、風鈴の音色などは、涼やかで心地良く、つかの間の喜びを与えてくれます。
 浄土宗が拠り所とする経典の一つ『無量寿経』には、「自然の徳風、徐く起こって微動するに、その風調和にして、寒からず、暑からず。温涼柔軟にして、遅からず、疾からず」と、極楽浄土の風について示されます。その風はさまざまな功徳を具え、どこからともなく吹き始め、寒くも暑くもなく、弱くも強くもなく、なんとも柔らかで心地よいのです。またその風は、極楽浄土の空を飾る宝玉の網や樹々を揺らし、仏さまの教えを数限りなく顕し、妙なる音を響かせる、とも示されています。極楽浄土は常に過ごしやすく、仏さまの教えが美しい音色とともに自然に耳に入り修行出来るのです。
 極楽浄土は一切の苦がなく、必ずさとれる世界。対してこの世は、思い通りにならない苦しみ多き世界です。私たちは人として生まれるはるか昔から、生き死にを繰り返しています。これを輪廻といい、お釈迦さまは輪廻の状態を断つ(さとる)ためのさまざまな教えをお示しになりました。
 数多ある教えは全て素晴らしいものですが、私たちはお釈迦さまの時代から遠く離れすぎたため、煩悩を滅して修行を完成し、この世でさとることが出来ません。宗祖・法然上人は、阿弥陀さまにすがり、念仏をとなえることで、極楽浄土に救われ、そこでさとることが、唯一の道だとお示しくださいました。″助けたまえ 阿弥陀さま〟という心で″南無阿弥陀仏〟ととなえれば、必ず誰もが救われます。この世をもがきながら生きる、さとりとは無縁な私たちを、阿弥陀さまは見捨てず、必ず平等にお救いくださいます。
 涼やかな鈴の音、心地良い風を感じた時は、極楽浄土へ思いを寄せる好機ではないでしょうか。極楽浄土は、絶え間なく快適で、喜び尽きない世界です。常日頃から憧れの思いを持ち、「南無阿弥陀仏」ととなえ続けて参りましょう。
(鳥取県鳥取市 光明寺 福田真也)