2021年02月:羽ばたく備え 怠りなく
私の実家は山の中腹にあります。その頂上付近には空港があり、よく飛行機を見て育ったせいか、いつしか飛行機が好きになっていました。
ある時、自家用機のパイロットの方と話す機会がありました。その方から、日々の整備だけでなく、飛行機は、目的地を定め、天気や航路の確認、重量や燃料の計算などをし、何一つ心配事がない準備の整った状態でないと飛ばすことができない、と教えていただきました。それはトラブルが重なると対処できず、大きな事故につながりかねないからだそうです。そして、飛行中もつねに、トラブルが起きた時の対処法を考えながら操縦かんを握っていると話してくださいました。気持ちよく自由に飛んでいるように見えても、安全に飛ばすには大変な苦労があるのだと思い知らされました。
人生も同じだと思います。目的が定まっていなかったり、準備が足りないと感じていては、着実な歩みは望めません。たとえ準備が整っていても、今般の新型コロナウイルスのように想定外のことも起こりうるわけです。
そんな人生の最大の不安は、「死」といえます。死後どうなるのか、その先があるのであれば、よりよいところへ行くにはどんな準備ができるか。誰もが迎える「死」の先の目的地やそこへ行く準備がわからなければ、人生は大きな不安に包まれてしまうはずです。
このような私たちの往く末を想い、阿弥陀さまは、「南無阿弥陀仏ととなえる者が命を終えたのち、かならず悩みや苦しみのない西方極楽浄土という世界に救うぞ」というお念仏のお誓いを立てられました。阿弥陀さまは、お念仏をとなえる私たちに、見えなくとも寄り添い、命を終えた時には西方極楽浄土という目的地に、救ってくださるというのです。
死の先が決まっていて、それが悩み苦しみのない場所であり、そこへ行く準備の仕方もわかっている。それは、人生のこの上ない安心につながるのではないでしょうか。
現在の困難な状況のなか、進学や就職など新たなことに取り組む準備をする方も多いと思います。その準備にお念仏をお忘れなく。お念仏の声の中、阿弥陀さまにお守りいただき、みなさまが目的地に向かい安らかに生き生きと羽ばたけることを願っております。
(和歌山県田辺市 浄恩寺 石橋圭示)