2025年7月:守られて導かれて救われて
針とお灸で逆子が改善すると聞いたら皆さまはどう感じるでしょうか。腰痛持ちの私が通う鍼灸院には、逆子を改善することで有名な先生がいます。
先生によると、人間には「経絡」という目には見えない糸のようなものが全身に張り巡らされているそうです。そして足の小指に「至陰」というツボがあり、そのツボが経絡を通じて子宮へと繋がっていて、温めたり針で刺激することによって、子宮が動いて運が良ければ逆子が戻るという理屈だそうです。
わが家の長女もまさにその施術により逆子が元に戻りました。先生は私が僧侶であると告げると次のようなお話をしてくださいました。
「『経絡』というものは科学的には未だすべて解明されておらず、すべてが解明されればノーベル賞は確実と言われるほどです。しかし、東洋医学では、はるか昔からその肉眼ではわからない『経絡』を理解し、治療を重ねてきたのです。お寺さんと私は、目には見えない、科学では完全に証明されていない、しかし確実に存在する『経絡』と、『仏さま』と向き合うという点で共通点がありますね」
ありがたいことをおっしゃるこの人は何者かと思いましたが、後にその先生は同じ市内の浄土宗のお寺の檀信徒であり、五重相伝を受けられた念仏者と聞いて大いに納得しました。
自分自身の至らなさや愚かさを見つめるとき、人の力をはるかに超越した阿弥陀さまの慈悲の心を信じずにはいられません。たとえ目には見えず、科学的に証明されていなくても、阿弥陀さまは念仏者にいつも親しく寄り添い、過ちを繰り返す私たちを決して見捨てずに間違いなく救い取ってくださいます。また、先に往生されたご先祖さまは私たちが阿弥陀さまとご縁を結ぶように、そして恐ろしい縁にめぐり合わないように導いてくださるのです。
この季節は、お寺参りやお墓参りなど尊いご縁を感じる絶好の機会です。どうかご先祖さまに手を合わせながら、阿弥陀さまに、守られて・導かれて・救われていくわが身であること、たとえ目には見えなくても確実に存在する尊い仏縁の糸を感じていただければと存じます。
(北海道札幌市 龍雲寺 丸山孝立)