今月の言葉

2025年6月:自利利他

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自利利他

Helping others helps ourselves.

「情けは人の為ならず」とはよく耳にすることわざですが、正しい意味をご存じでしょうか。「情けや親切心は相手の為にはならない」、という意味ではなく、正しくは「人にかけた情けや親切心はめぐりめぐって自分のもとに還ってくる」という意味です。きっと皆さんもこのことばの正しい意味を知らず、様々な場面で困っている人に遭遇した際に、「助けてあげるべきかな」「教えてあげたほうがいいのかな」と迷ってしまったこともあるのではないでしょうか。
 私は今年の3月末までの4年間、浄土宗の宗門校である大正大学の浄土学研究室副手を務めてました。業務は多岐にわたりますが、これから浄土宗のお坊さんを目指す学部の学生さんや、大学院で研究を頑張る学生さんのサポートをすることも仕事の一つでした。
 日常的に学生さんとやり取りをする中で、しばしば「レポートや論文をどう書けばよいのか」、「調べ事があるがどのような本を探せばよいのか」、「この文のこの箇所をどう解釈すればよいのか」、など多くの質問をいただくこともありました。もちろん仕事中は他にもやらなければならないことは多くあります。また、勤務時間外にも問い合わせが来ることもありました。しかし彼らは困っているので放っておくこともできません。
 私は可能な限り対応することに努めました。すでに知っている、分かっていることであれば、彼らに教える中で自身の復習にもなる。そして、分からないことであれば、一緒に悩み、調べていくうちに解決の糸口が見いだせ、新たな知識や経験として自分に蓄えられていく。そのような思いで仕事をしていました。
 私たちが普段おとなえするお念仏にも共通する部分があると思います。おとなえする南無阿弥陀仏の一声一声には、先立たれた大事な方に向けたご供養の想いが込められていますが、本来のお念仏とは、自分が極楽浄土に往生するためにとなえるものですので、大切な方へとなえたものも、自身の善行の積み重ねとなります。
 どのようなことであれ、誰かのために小さなことから一つ何かしてみませんか。きっと私たちを成長させてくれるよい糧ともなることでしょう。
(埼玉県松伏町 源光寺 里見奎周)