2025年8月:仏縁を継ぐ夏休み
長い間入院生活を送っていた父が 令和元年に往生しました。面会に行くたびに、弱っていく姿に辛さを感じる日々。亡くなる三日前、面会に行った時も、酸素マスク姿、かすれた声で「大丈夫か?」と尋ねてきました。自分が大変にもかかわらず、私を心配してくれていたのです。その時、どんなに辛くても私を気にかけてくれる父の姿が、私たちに寄り添ってくださる阿弥陀さまと重なるように感じました。
仏教では仏教では、何かをきっかけに仏さまを感じたり、仏教に触れることを、「仏縁」と言います。
そして、中国唐時代の高僧・善導大師は阿弥陀仏と念仏をとなえる私たちとの間には、親縁、近縁、増上縁の三種の縁「三縁」があると示されました。
親縁とは、私たちが阿弥陀仏の名をとなえるとき、仏さまはそれをお聞きになり、仏さまを礼拝するとき、仏さまはそれをご覧になる。仏さまを思えば、仏さまも私たちを思ってくださる、というもので、法然上人は、「仏も衆生もおや子のごとくなるゆえに、親縁となづく」と私たちと仏さまの間に結ばれる「親しい」関係を親子に例えました。阿弥陀さまは、まるで親のように、私たちが安らかに過ごせるようお護りになってくださっているのです。
近縁とは、私たちがお念仏をとなえ仏さまを見たいと願うとき、仏さまはその声に応じて目の前に現れてくださることを言います。実際に目に見ることはなかなかできませんが、どこにいても、阿弥陀さまは近くに来てくださり安心感を与えてくださるのです。
増上縁とは、お念仏をとなえると仏さまが念仏者の罪を滅してくださることを意味します。これは、罪をなかったことにするのではなく、その罪によ って受ける報いを、阿弥陀さまが働かないようにしてくださるということです。そして、私たちがこの世を去るときには、阿弥陀さまと菩薩さまたちが迎えに来てくださり、浄土往生をかなえてくださるとされています。
阿弥陀さまと私たちを繋ぐのは、「南無阿弥陀仏」のお念仏。
普段は忙しい生活を送っている私たちですが、お盆や夏休みで親戚や小さい子どもと集まる人もいるでしょう。この機会にともにお念仏をおとなえし、若い世代、仏教と縁がなかった方々に仏縁を継いでまいりましょう。
(三重県伊賀市 專念寺 宮嵜美政)