今月の言葉

2022年04月:咲いて誇らず

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咲いて誇らず

When things go well, don’t halt but take another step forward.

私たちの日々の生活は多くの人たちの支えによって成り立っています。家族や友人や職場の人など、身の周りにいる人たちはもちろんのこと、自分の知らないところでもあらゆるものに支えられて生かされています。

今年の冬季北京五輪で、スノーボード女子ビッグエアに出場し、日本女子最年少メダリストになった村瀬心椛(ここも)選手はインタビューで「家族や友達やスポンサーの人たちのおかげです。私だけで取れたメダルではないので、皆さんに感謝しかない」とコメント、その姿が大変印象的でした。
目まぐるしく変化する現代社会において、心にゆとりを持つことは難しいものです。時に大きな壁にぶつかったり、やっとの想いで困難を乗り越えられることもあるでしょう。私たちは思うようにいかない日々の繰り返しにより、心のゆとりは削られ、いつしか自分一人の力で世の中を生き抜かなくてはならないと感じることすらあります。

私はそのようなとき、宗祖法然上人が、浄土宗の教えを記された「一枚起請文」にある「智者のふるまいをせずして、ただ一向に念仏すべし」の一節を思い出します。
法然上人は比叡山で学問を修めていた際、さまざまな経典の中から、「南無阿弥陀仏」とお念仏をおとなえすれば、生きとし生ける者、皆が救われる教えを見出しました。上人は比叡山のなかでも「智恵第一の法然房」と評されるほど優秀でしたが、卓越した知識をもっていても、それを人にひけらかすことはありませんでした。

このことを、今の私たちの生活に置き換えてみるとどうでしょう。社会の荒波に揉まれながら、己の信ずる道を突き進んだ先にある幸せを掴んだとしても、人をないがしろにしたり、さげすんだりしては、築き上げてきたものの、真の価値は見出すことはできません。さらには支えてきてくれた人たちの気持ちを踏みにじることへもつながってしまいます。

法然上人は、すべての人々が救われるための方法を探し、その見つけた答えに対して、ただひたすらに精進されました。だからこそ、800年以上にわたり人々の心に受け継がれてきたのです。上人の教えは今なお人々に篤く信仰されていますが、教えだけでなく、その生き方も学びたいものです。

(長野市淵之坊 若麻績憲義)