今月の言葉

2022年03月:縁距離を大切に

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縁距離を大切に

While chanting Namu Amida Butsu, you can feel the close presence of Amida Buddha and of dear ones who have gone before.

新型コロナウイルスが日本で確認されて2年が過ぎましたが、いまだ先の見えない現状が続いています。

何とも思っていなかった行動のいちいちをためらうようになったのは私だけではないと思います。感染者が減ったら実家に顔を出しに行こうと思っていても、「うつさない、うつらない」を考えるとどうしても帰郷ができませんでした。やはり家族のことや勤め先、またお参り先であるお檀家さんのご家族を考えると、リスクある行動はより自粛するようになりました。
先日、お檀家さん宅にお参りに行った時の出来事です。例年、必ずおばあさまをはじめ親子三代が集まり、部屋にはたくさんのご家族が揃います。おばあさまは必ず私の隣に座り、全員で先祖供養のお勤めをしておりました。

しかし、今年は部屋におばあさまと息子さまの二人のみで、その後ろにはパソコンが3台。感染拡大を考慮し、家族は全員集まらず画面越しの参加にしたというのです。お焼香の際には、おばあさまが画面の前に香炉を持っていき、代わりにお焼香をされていました。きっと画面の向こうのご家族は、自分がお焼香をしている思いで手を合わせたことでしょう。

いつもならお参り後に家族で外食に行っていたそうですが、それもできませんでした。寂しい気持ちを吐露しながらも、おばあさまは「画面越しでも同じ目的をもって家族全員でお参りできたことは本当にありがたい」と話されました。実際に会えない寂しさがある反面、普及し続けているネット環境や機器の発達によって、画面越しに会うことができる。離れていても心のつながりを感じることができたというおばあさまの言葉に、僧侶として、また帰郷できない一人の人間として、とても感慨深いものがありました。

さて、3月は春彼岸があります。そのお中日には、どこで誰が見ても、太陽が真東から昇り真西に沈みます。沈むその方向に、阿弥陀さまやご先祖さまがいらっしゃる西方極楽浄土があります。現在も集まるのが難しい状況ですが、場所は違えど同じ目的をもって阿弥陀さまとご先祖さまに想いを馳せながらお念仏をおとなえしましょう。
遠く離れていても、お念仏の縁によって心がつながっている。そう感じることができるはずです。

(滋賀県甲賀市 十楽寺 井口浄彦)