今月の言葉

2023年4月:未来は善き縁で開かれる

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未来は善き縁で開かれる

Good encounters can lead you to a better future.

「有機農法と自然農法の違いで苦しんでるのよね」
最近、ある集まりでパーマカルチャー(永続可能な農業をもとに自然との調和を目指す文化活動)の団体を運営する知人が漏らすのを聞きました。
「え? 有機農法と自然農法って同じじゃないの?」
「全然違うのよ。有機農法は農薬や化学肥料を使わないだけなんだけど、自然農法になると草刈りもしないし、人工物や肥料も一切使わないの。だから似ているように見えても作業が違うから、一緒に畑をやっているとぶつかっちゃうのよ」と教えていただきました。
この世では農業に限らず、あらゆる分野において「似ているように見えて少し違う」ことがたくさんあります。実際、それらには多くの共通点がありますが、両者が出合ったときに、そこに着目して協力し合っているかというと必ずしもそうではなく、むしろ細かな違いを強調して対立する方が多いような気がします。「互いに歩み寄りが大切」と頭では分かっても、それができないのが凡夫の性なのでしょうか。せっかくのご縁をわずかな違いで生かせないのはとても残念なことです。
法然上人が念仏往生のための肝要を記した『念仏往生要義抄』のなかで「このたび輪廻の絆を離るる事、念仏に過ぎたる事はあるべからず。この書き置きたるものを見て、誹り謗ぜん輩も、必ず九品の台に縁を結び、互いに順逆の縁虚しからずして、一仏浄土の友たらん」と述べています。
これは、お念仏の信者にとって好ましいご縁の方はもちろん、そうでない方(お念仏を非難する人)であっても、お念仏との縁を結んだなら極楽浄土に往生を遂げ、そこで互いに友となれる、という意味です。このご法語から私たちは、その時には好ましくないと感じるご縁も、後になってみれば「あれが自分にとっては大切な縁だった」と思えることもある、ということを学べるのではないでしょうか。
とするなら、自分と価値観が違う人と出会い、拒否反応が出た時こそお念仏のおとなえ時、そう言えるかもしれません。好ましくないと感じるご縁もその場で切り捨てることなく、「善き縁になるかも」と受け止めようとすることが、融和と平和の未来を開くことにつながると思うのです。   
(愛知県豊田市 弘誓院 秋田尚文)