2023年12月:希望の灯 どこまでも
本年も残すところあと僅かとなりました。年末になると、この一年や人生を振り返る方も多いかと思います。みなさまはこれまでどのような人生を歩んでこられましたか。幸せなことがあれば反対に辛いこともあるのが人生というもの。山があり、谷があり、そして「まさか」という坂があるともいいます。いつ何が起こり、苦しみ、悩み、迷ってしまうかわかりません。人生という名の荒波の航海を続けるには導きとなる目標が必要ではないでしょうか。
岩手県大槌町には人形劇『ひょっこりひょうたん島』のモデルともいわれる蓬莱島というひょうたん型のとても小さな島があります。この島には古くから灯台が立っていましたが、東日本大震災による津波で倒壊してしまいました。そこで、復興のシンボルとして親しんでもらえるよう公募で選ばれたデザインをもとに、震災翌年の12月に灯台が再建されました。新しい灯台は赤蝋燭と砂時計の二つをコンセプトとした形で、頂きの光る部分は太陽を表し、それらは、「鎮魂の祈り」と「復興に向けて時を刻んでいくこと」を意味しているそうです。まさに、町の人々をどこまでも照らし続け、未来へと導いてくれる「希望の灯」といえるものです。
そして、この町では「希望の灯」の導きとともに、蓬莱島から正午になると人形劇『ひょっこりひょうたん島』の曲が鳴り響き、人々を勇気づけているのです。そのようにして、復興に向けて一日一日、一歩一歩、確かに歩んでいる人々の姿に私自身とても大きな勇気を与えられたのでした。
「苦しいこともあるだろさ 悲しいこともあるだろさ だけど僕らはくじけない 泣くのはいやだ 笑っちゃおう 進め!」(「ひょっこりひょうたん島」 歌:前川陽子、作詞:井上ひさし・山元譲久、作曲:宇野誠一郎)
法然上人は苦しみや悲しみに暮れる人々に心から寄り添い、お念仏のみ教えをお示しくださいました。そのみ教えはまさに私たちの未来をどこまでも照らし導いてくださる「希望の灯」です。私たちはその灯を自己のよるべとして、「南無阿弥陀仏」とお念仏の声を響かせながら、この人生を確かに歩ませていただきたいものです。
(京都府伏見区 阿弥陀寺 岩井正道)
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