令和7年度 助成金交付式・活動報告会 寺院が地域社会で果たす役割
浄土宗ともいき財団(佐藤行雄理事長)が寺院・僧侶の公益性ある活動を支援する助成事業の令和7年度助成金交付式と6年度活動報告会が5月29日、東京都内の会場で行われ、全国からの参加者が学びと交流を深めた。助成は今年度で計延べ470件に達し、宗の社会貢献事業として定着している。

地域社会で福祉や教育、防災などさまざまな分野での寺院の活動を後押しするこの事業は、平成29年度から始まった。今年で8年が経ち、多くの実績を積み重ねてきたことを受け佐藤理事長は交付式のあいさつで、「皆さんの有意義な活動にお礼を申し上げます。長年、地域の中心にいる寺院の方々の目に映るものこそが現代社会の課題」と激励した。
今年度助成が決まったのは、北海道から九州まで計55件の寺院や団体で、総額1999万7千円。
助成対象となる活動は、カフェや寺院での食事を通じた地域活動、貧困者支援、自死問題への対応や環境、文化活動など幅広く、特に子ども食堂などの若年層を対象とするものが計26件と半数近くを占めた。
式では各団体の住職や寺族ら一人ひとりに今岡達雄審査委員長が助成通知書を手渡し、代表して東京教区香念寺住職の下村達郎師が「すぐに見えなくても取り組みの先に悩み待ち望んでいる方々がいる。そこに手が届くように活動を継続していきたい」と決意を述べた。
活動報告では、さまざまな理由から学校にいけない子どもを対象に学習や心のケアなどをする「フリースクール てらこやさん」を行う尾張教区浄土院副住職の児玉匡信師と、そこで先生を務める渡部和華羽氏が活動内容を報告。コロナ禍を経て学校に行けなくなった子どもたちの居場所として、「自分のペースで自分らしく」をモットーに平日は毎日開校し、ゲームや球技、人とのコミュニケーションなどを通じて、「尊い人生を自分でデザインできる子になる」ための場を提供している様子を詳述。参加児童からは「一人より誰かと関わりたい」、親からも「子どもに笑顔が戻った」と好評だという。
石川教区弘願院住職の森岡達圭師は、「ともいきてらつど」という児童らに家や学校と違う集いの機会を月数回作る催しのほか、家庭で余った食品を集配するフードドライブなど、寺と地域を結びつける「数珠つなぎプロジェクト」を報告。神奈川教区福泉寺副住職の松原大悟師と福井教区善導院寺庭の清水明菜氏もそれぞれ、学習支援や食を通じた子どもたちへの働きかけを紹介。いずれもが地域住民のつながりの場、拠りどころとして寺院の機能を生かすことの大事さを訴えた。
会場では参加者同士の交流も深まり、人材や資金の確保、広報の方法などで経験を分かち合いながら広範な社会活動の重要性を再認識。学んだ内容や意見、感想を早速SNSなどで発信する人もいた。
(ジャーナリスト 北村敏泰)