浄土宗新聞

追悼と平和の鐘の音響く 戦没者追悼・平和誓願法要

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大鐘を撞く知恩院の僧侶ら。同院の鐘は、子綱と呼ばれる細い綱を16人で引き、親綱と呼ばれる綱を持った1人が倒れこむように打つのが特徴。大鐘楼を訪れた人の中には、鐘の音を聞きながら手を合わせる人も見られた

7月15日、京都市東山区にある総本山知恩院(伊藤唯眞門跡)と浄土宗(川中光敎宗務総長)が、「第二次世界大戦終戦八十年追悼・平和誓願法要」を共催で営んだ。
 これは終戦から80年を迎える本年、知恩院が例年営んでいる盂蘭盆会に併せ、戦争によって失われた命を悼み偲ぶとともに、平和への想いを新たにすることを目的として勤めたもの。
 法要に先立ち、戦没者の追悼と、戦争体験を風化させることなく後世に紡いでいくことへの誓いの想いを込め、同院大梵鐘が、8度打ち鳴らされた。
 大鐘は、日本三大梵鐘の一つとして知られ、高さ3・3㍍、重さ70トンに及ぶ。普段は法然上人の遺徳を偲ぶ4月の「御忌大会」と、12月の「除夜の鐘」でのみ打ち鳴らしており、それ以外で撞くのは異例だという。
 「えーいひとーつ」「そーれ」という掛け声とともに、17名の僧侶が協同して、直径約50㌢、長さ4・5㍍もある巨大な撞木で大鐘を撞くたび、境内には重厚な鐘の音が響き渡った。
 その後に同院御影堂で、伊藤門跡導師のもと厳修された法要には、川中総長をはじめ、同院や宗内の要職者など約50名に加え、一般の参詣者なども多数参列。
 法要中の「追悼の辞」で川中総長は、戦没者への追悼の意を表すとともに、第二次世界大戦中に浄土宗教団が戦争に協力した歴史を懺悔し、「争いのない平和な社会を築くために、あらゆる努力を惜しまない」と決意の言葉を述べた。
 また、法要の功徳を亡き人々の供養などに振り向ける回願において伊藤門跡は、戦争で亡くなった人々が浄土において、敵味方という立場をこえて互いに思いやる「怨親平等」の心をもって、ともに仏の道を歩んでいくことを願われた。
 参列者らは、戦争の犠牲者を想い念仏をとなえ、その声は堂内に響き渡っていた。

「追悼の辞」を述べる川中総長。堂内には、戦災で亡くなった人々の供養のために特別な位牌が設えられた