大本山増上寺 第89世法主 小澤憲珠台下 晋山式 厳修
境内のソメイヨシノの蕾も膨らみ、暖かな日差しから春の訪れが感じられる大本山増上寺で3月2日、同寺第89世・小澤憲珠(おざわけんじゅ)台下の晋山式が荘厳かつ盛大に営まれ、山内にお念仏の声が響き渡った。
晋山式とは、新たな住職が、住職として初めてそのお寺に入ることを祝して営まれる法要のことで、「晋」は進む、「山」は寺院を意味する。
大本山増上寺(東京都港区)は、浄土宗の大本山の一つ。明徳4年(1393)に、浄土宗第八祖・酉誉聖聡(ゆうよしょうそう)上人が開山。徳川家康の篤い帰依を受けたことを契機に、徳川家の菩提寺として、また関東十八檀林(僧侶の学問所)の筆頭としても栄え、東日本を代表する念仏根本道場として現在も多くの人々が参詣する。
式は午後1時30分、梵鐘の音を合図に練り行列から始まり、小澤台下は、同寺大門(総門)前にある塔頭(山内寺院)・浄運院から出発。大殿前に到着すると、縁山流声明の掛け声の下、庭儀式(本堂前で行う儀式)を勤め、境内にご詠歌が響き渡るなか、大殿に昇殿された。
台下は、堂内正面の同寺本尊・阿弥陀如来像に深く礼拝され、その後に読経が始まった。台下は法要のなかで、表白(法要趣旨を綴った文章)を読み上げ、前法主(住職)・八木季生(やぎきしょう)台下から法灯を継承し、本年が増上寺開創630年、さらに浄土宗開宗850年のお待ち受けの年(前年)であることに触れ、「開宗850年慶讃法要と同事業を成就することに身命を賭したい」と述べ、晋山の決意を法然上人や歴代住職に誓われた。
法要中、参列者に十念が授与され、念仏の声が響き渡った。また大本山金戒光明寺・藤本淨彦(じょうげん)台下と、檀信徒代表として德川宗家当主・德川家広(いえひろ)氏が祝辞を述べられた。
当日は、各大本山の御法主台下らをはじめ、川中光敎(こうきょう)宗務総長ほか、宗内外の要職者を来賓に迎え、増上寺檀信徒、小澤台下が住職を務められた極楽寺(東京都八王子市)檀信徒など約1000名が参列し、晋山の喜びを分かち合った。
小澤台下は昭和16年生まれの81歳。大正大学教授として、学生の指導に尽力され、同大学副学長・浄土宗学監に就かれた。昭和62年から極楽寺住職を務められたほか、教学審議会委員長や勧学院勧学職、浄土宗総合研究所所長などの宗内要職を歴任された。