令和6年8月

投稿日時

歌壇
堀部知子 選 投歌総数105首

富山 山澤美栄子

三才児寺の鐘の音好きらしく毎夕六時に聞きに行くそう

なかなかほほえましい一首。まだ3才ですよ‼おどろきです。将来が楽しみな予感が…。

大分 吉田伸子

ちちははの老いの深まるその姿思い出しては懸命に生く

共感する人は多いのではないでしょうか。ご両親のその懸命な日々は作者にとって大いなる力に…。

東京 蚫谷定幸

思いつつも言葉に出せぬもどかしさ吃音の苦を持ちつつ生きる

大丈夫、大丈夫、どうぞそれをカバーする力を出して、作歌に励んで下さい。応援してますよ。

大阪 安藤知明

マンションの小さき庭に寄る雀近くに大きな公園があるに

京都 根来美知代

その隅に庭の名残を置きしまま空き家は駐車場へと変わる

大阪 林孝夫

楽しみはカンボジアの孫の学校のHP見てコメントをすること

長崎 吉田耕一

百薬の長といえども毎晩は齢重ねて量が減りゆく

長崎 太田ミヤ子

早世の娘が挿し木せし紫陽花の重たからずや露うけ凛と

滋賀 大林等

早苗萌ゆる水面に映る遠き山風に吹かれて吾に頬笑む

宮城 西川一近

日長ゆえ娘と手を組み新緑の境内もとおる妻のリハビリ

滋賀 森嶋直子

健やかな今をかみしめ知恩院にて御詠歌唱へ練り歩きたり

埼玉 山本明

吞兵衛の女子の見舞ひを受くる夜の酌夫となりたる我ぞ愉しき

神奈川 上田彩子

篠笛のアンサンブルや古民家にいにしえ人の楽しみを聴く

青森 吉田敦

大谷と山本の観戦しつつデイサービスの利用者の白玉団子仕上げる

神奈川 内田陽子

吾子を抱く孫の笑顔を亡き夫に見せてやりたし心ひそかに

初句「わが子抱く」を「吾子を抱く」にした。

俳壇
坪内稔典 選 投句総数202句

富山 山澤美栄子

蛍袋ほたる来ないか待っている

蛍袋に蛍が来るのを人が待っているのか。あるいは、蛍袋が蛍を待っているのか。どちらにしても楽しい。ボクは「ついさっきホタルブクロを出た人か」(句集『リスボンの窓』)と詠んでいる。

東京 山崎洋子

手秤で青梅笊にあふれさす

動作のようすが目に見える。わざとこぼしているのだが、笊からあふれた青梅たちがとっても生き生きとしている。だからさらにあふれさせる。

山梨 山下ひろ子

朝焼やきょうはみんなで枇杷獲る日

朝焼けの日は天気が悪くなりがち。雨になるまでに枇杷を獲るのだろう。「みんなで」がいいなあ。楽しい収穫のようすを連想させる。

福岡 伊熊悦子

鈍色のペイペイドーム夏霞

福岡 伊熊朋則

新樹光若き庭師のピアスかな

栃木 伊藤和子

窓際の席から埋まる青葉光

滋賀 小早川悦子

母見舞う父の日課や夏帽子

大阪 津川トシノ

雨の日はでんでん虫になる気分

滋賀 野口直子

麦の秋みそ汁少し濃くしましょ

三重 森陽子

ビル解体遥か万緑現わるる

埼玉 山本明

晶子忌や兵たる祖父の古写真

大分 吉田伸

駅通りなんだか壮快衣更え

静岡 太田輝彦

春日和7人乗りの乳母車

奈良 中村宗一

燕らはSDGs知っていた

京都 根来美知代

くたびれてきたペコちゃんのアロハシャツ

愛知 山崎圭子

走り根かおっとくちなはのったりと

神奈川 上田彩子

五月病埴輪に逢いにくる少女

大阪 永田真隆

梅雨寒の朝線状降水帯

長崎 吉田耕一

潮騒にはためく幟五島灘

長崎 平田照子

城壁にさざ波寄せて花おうち

福岡 上野明

晴れた日の野焼きの煙垂直に

原句は「晴れた日に野焼き煙が垂直に」だった。二つの「の」が風景を快く感じさせる。