令和7年5月

投稿日時

歌壇
堀部知子 選 投歌総数149首

群馬 伊藤伊勢雄

如月の静かな日和に薯の播種今年が最後と言いつつも五年

この一首は結句に作者の感慨があるのでしょう。結句を「言いつつ五年」に「も」を加えた。

群馬 新井日出子

ウクライナの幼き児らの戦地みてユニセフ支援をまたも送りぬ

「またも送りぬ」の結句で何度か送られているのでしょう。作者のお気持が直に伝わってくる。

滋賀 大林 等

ランドセル背負い手を振る孫を見て早春の風窓から入る

結句の見事な転換にすがすがしさを感じる。情景が自ずと見えてくる一首。

秋田 小川慶子

啓蟄に八十路に向かい散歩する青空高く雁渡りゆく

奈良 川本惠子

きっと来るわが世の春はゆっくりと歩みを止めずわれの元へと

宮崎 髙平確子

一日の仕事を終えて己が時間何度目かに読む藤沢周平

大阪 津川トシノ

まどろみて二ツ乗り越す未知の駅学校のあるらし制服の子ら

埼玉 山本 明

雪融けの温泉町は思い出の妻との旅の始まりの町

三重 本城美喜子

雛段に孫が作りし折紙が日に日に増えて雛様笑う

三重 本城美喜子

雛段に孫が作りし折紙が日に日に増えて雛様笑う

広島 山本玲子

四万十の広き川面に漁りする小舟に差せる二月のひかり

京都 岡田直子

古都の春山もだんだん色づいて桂川には鯉の群れ見ゆ

青森 中田瑞穂

島々を渡る小舟の影見えて暮れゆく瀬戸の海の閑けさ

京都 根来美知代

ばあちゃんに貰った図書券使ったよ「こびと図鑑」は大きく重い

神奈川 上田彩子

急逝の友の柩に収めんと追悼文書く立春の夜

原作の結句「春立つ夜に」であった

俳壇
坪内稔典 選 投句総数257句

神奈川 上田彩子

雛飾る誰か見に来てくれないか

この気持ち、分かるなあ。先日、部屋の模様替えをしたボクは、それを見てもらいたくて、近所にいる大学生の孫に「すき焼きをするよ」とメール。孫の好物のすき焼きで釣ったのです。

京都 神居義之

大皿に山盛りの春サラダバー

今どきの風景です。「山盛りの春」という表現がいいです。サラダがうまそう。

山梨 山下ひろ子

余寒なほ目薬一滴右頬に

右頬にこぼれた一滴のひんやりが余寒そのもの。

福岡 伊熊朋則

サイフォンの最後の滴日脚伸ぶ

福岡 伊熊悦子

集合のホイッスル春の動物園

佐賀 織田尚子

冬野菜ストック十種秘密基地

滋賀 小早川悦子

カーテンのいないいないば春陽揺れ

大阪 津川トシノ

啓蟄のモゾモゾ感が好きですよ

大阪 森 敏記

真冬さへ半袖介護士駆け回る

大阪 原田勝広

春うららほんのり柔きクレパス画

滋賀 山本祥三

春障子伝い歩きが穴をあけ

大分 吉田伸子

予期せざる宅急便の苺など

京都 大八木純正

春寒や文鳥の乗る手の温み

東京 小室清恵

草餅はあんよりきなこ母ゆずり

京都 根来美知代

ゆっくりと落とすブルマン若葉雨

大阪 光平朝乃

油屋の名の残る辻馬酔木咲く

京都 観山哲州

啓蟄や老いの一徹われになし

愛知 山崎圭子

飛石は私の歩幅下萌ゆる 

大阪 山崎有夏

牡丹雪お仏飯のこんもりと

東京 山崎洋子

春めくや吹けど動かぬラテの泡

石川 山畑洋二

眼差しは遠き日のまま内裏雛

長野 出澤悦子

春雷やブラックチョコの好きな人

「好まるる」を「好きな人」と具体的にした。俳句作りのポイントは具体的に表現すること。