令和7年6月
歌壇
大阪 安藤知明
同期会これが最後と言いつつも桜咲くころ誘いのメール
評
長寿の社会となり、皆元気で同期会ともなればやはり心が動き出す。是非お出かけ下さい。
埼玉 石村和子
大殿で唱導師のお十念散華舞い散りここはお浄土
評
その場の雰囲気がこの一首で良く伝わり、結句によって、作者の感動が更に高まる。
宮城 神尾三重子
手習いはいくつになっても大丈夫その気になれば古希も傘寿も
評
同感、同感。「その気になれば…」です。長寿社会のなかで大いに羽ばたいて下さい。
滋賀 大林 等
スタートはひとり家族の二十才代今や六人苦節の末に
奈良 中村宗一
わが寺は浄土宗では珍らしいご本尊様は薬師如来様
青森 吉田 敦
ボーーッとしているわたしのギア変える力はわたしじゃない別のもの
京都 観山哲州
繭を吐く蚕の姿は美しき吾も全力で言葉を紡ぐ
長崎 吉田耕一
また一つ年相応が増やされる定期健診聴力検査
京都 観山ヒロクニ
諺に「長所は短所」と言うがありネガティブすぎ る「長所は長所」
静岡 河合しのぶ
水がひきタニシが描くピカソ風田んぼの脇の泥の キャンバス
東京 山田美知代
おでんでは先に蒟蒻最後には卵と巾着いまも変らぬ
埼玉 横山隆一
白い雲荼毘の煙と相和してパパと呼ぶ声聴ゆるごとし
兵庫 山田美知代
辛夷咲きつい口ずさむはあの人のふる里想う北国の春
滋賀 今村圭吾
世の中は舞い散る花弁・華小径想ひ香を乗せ君に届けん
和歌山 宮本博信
菩提寺に花嫁迎え歓迎会春雷のなか念佛申す
評
添削 初句「菩提寺の」を「に」に。
俳壇
大阪 原田勝広
春うららビン牛乳とあんパンと
評
この昭和的な風景、いかにも「春うらら」という感じ。ボクは紙パックの牛乳とあんパンをリュックに入れて歩いています。
兵庫 堀毛美代子
おっとっと足こぼれそう春の土手
評
「足こぼれそう」がいいなあ。足、勝手に動きますね。老いて足のその自由(?)に気づきました。
東京 山崎洋子
鉛筆でうすく祖母の字種袋
評
祖母は種袋を残して他界した感じ。「うすく」がなんだか切ないです。
神奈川 里中 信
看護師がまとめて飾る鯉と雛
滋賀 野口直子
楤の芽や数控え目に捥ぐ朝よ
和歌山 福井浄堂
歩いても歩いてもただ夕霞
和歌山 福井浄堂
カサコソと伸びをしたのか種袋
大阪 森 敏記
チューリップひとつ目咲きしとメール来る
滋賀 三宅俊子
春昼の籠の鳥もう十五年
福岡 稲永順士
ぎゅうぎゅうと詰めし弁当に桜餅
神奈川 上田彩子
春雨やふくみ笑いの観音図
京都 上田和栄
無理せずに風に任せる春ショール
岩手 小野寺満
二度三度見に行く先にクロッカス
京都 岡田直子
新緑に吾子のスキップ高く跳ね
東京 小室清恵
復興の鯖缶を売る御忌の寺
青森 中田瑞穂
彼の人も吾も窓辺か春銀河
奈良 中村宗一
なあ兄貴しっかりせよとネギ坊主
京都 根来美知代
船長は女性軍港巡る初夏
大阪 光平朝乃
箱膳にひきだしありて亀鳴けり
京都 観山哲州
亀鳴いて心の扉あくような
評
添削「あけてみる」でした。作者の思いや意志を消すと句の世界が広がります。