令和7年11月

投稿日時

歌壇
堀部知子 選 投歌総数126首

京都 荻野 浩

掌を合わせ五山を焦がす送り火に父・母偲び夜空を仰ぐ

非常に素直に詠まれており、その場の雰囲気までも伝わってくる。続句が効果的だ。

滋賀 中村ちゑ

まず先に求めし手帳に記しおく吾子の命日忘れぬように

上句がとても良く、素直に下句にながれていく。命日は特にお子さんであれば忘れられないでしょう。

滋賀 今村圭吾

おはぎより赤福くれよと母の声彼岸の墓参に伊勢路の土産

上句がとても良く、母上の声が聞こえてくるようだ。母上にとって赤福は大好物だったのでしょう。

京都 赤尾智子

地蔵盆ふせ鉦の音鳴り響き数珠繰る子らの顔輝けり

奈良 川本惠子

奈良井宿夫同行の二人旅思い出の増す秋時雨かな

大分 小林 繁

春耕の労を休める草畔に妻の手作り小昼の旨し

奈良 中谷理英

ひともとの蕾の朱き彼岸花にこれから出番と秋風 の吹く

宮城 西川一近

古びたる仁王門の額縁に小さき緋色の座布団飾らる

埼玉 山本 明

羽白き鴉と遇ひし昨日より負へる重荷の軽みたり けり

東京 蚫谷定幸

月蝕は何度目だろう十代の頃から赤い月に魅せら れ

京都 岡田直子

わが娘小五になりて登校の最後尾をゆくサブリー ダーに

京都 根来美知代

五限目は俳句の授業参観日に歓声上がる教師の一句に

熊本 森 直美

迫りくる水の勢いを避けながらアクセルを踏む足は震えて 

二句目「水の勢い」を「水の勢いを」に。

俳壇
坪内稔典 選 投句総数296句

滋賀 小早川悦子

夕日の中金髪の娘とゑのころと

「熱きコーヒー」が棟梁と秋めいた朝をきりっとさせている感じ。コーヒーを飲みたくなるなあ。

秋田 高橋さや薫

棟梁は熱きコーヒー今朝の秋

この句のエノコログサ(猫じゃらし)は金エノコロかも。夕日をバックにして娘とエノコロが輝き、575の表現がすてきな言葉の絵になった。

東京 山崎洋子

正座して掛けるアイロン秋暑し

正座によってアイロンの熱さと秋の暑さに対峙している。この句も575の言葉の絵です。

福岡 伊熊朋則

語り部は十二の才子広島忌

三重 稲垣三枝子

皆揃い慣れた手順で墓参り

大阪 大内純子

青蜜柑夫の土産を両の手に

群馬 長田靖代

青蜜柑夫の土産を両の手に

岩手 小野寺満

朝に聞く熊鈴涼しりんりんと

京都 糟谷藍子

爽やかに夢物語る空いっぱい

奈良 川本惠子

薄紅の秋桜ゆれて日々のどか

三重 北出楯夫

赤紙のことも語りて終戦日

大分 小林客愁

手花火や幼に帰る妻の所作

大阪 津川トシノ

赤蜻蛉夕日に溶けてまた明日

兵庫 堀毛美代子

輪に入りて踊ればみんな土地っ子よ 

大分 吉田伸子

雷鳴や老いて独りのワンルーム 

東京 蚫谷定幸

塩辛蜻蛉がわれを導く朝の路 

アメリカ 生地公男

山火事を避けて到来秋の蝶

和歌山 井口廣司

曼珠沙華悪さしたかと母の声

福岡 稲永順士

澄みわたる豆挽く音や秋の朝

東京 小室清恵

日時計の影のくっきり指す大暑

長野 出澤悦子

飽きないよライン動画の暑中見舞

京都 根来美知代

道の駅解説書付き秋七草 

埼玉 山崎和恵

空腹と腹立ちレモン水一気

大阪 山崎有香

赤蜻蛉導くようにホバリング

青森 吉田 敦

もろこしを左で茹でて右で焼く

京都 孝橋正子

甚平の子の口まわりヨーグルト

原句は「甚平の子口のまわりの」だった。リズムを整え、楽しい雰囲気を強めた。