令和7年12月

投稿日時

歌壇
堀部知子 選 投歌総数130首

滋賀 小川 豊

おにぎりに娘の指の香りして二口食べぬ九月九日

二句目、三句目なかなかするどい把握。九月九日は、作者にとって忘れられない日になったことでしょう。

埼玉 川田芳章

七人のシートみんながスマホ見て私ひとりが新聞を読む

今どきの一首で、寂しいですよね。折角の旅行なのに…。七人でいろいろ話題もあるはずなのに。

京都 後藤喜美子

仏壇におはようさんと手を合わす事の運びがとんとん拍子

下句の「とんとん拍子」の事の運びはいったい何だったのでしょうか。

大分 小林 繁

我の詩に曲付けくれし友人のCD届き幾度も聞く

宮崎 髙平確子

給湯器新型に変え節電す空気の熱を利用するらし

兵庫 堀毛美代子

ある時は母のごとくにある時は友のごとくに見え る娘よ

埼玉 山本 明

相模原孫の探せしかぶと虫餌やる朝ぞ楽しかりける

大分 吉田伸子

パソコンの麻雀ゲームの日課らし百寿の祝い嫗あ っぱれ

埼玉 石村和子

秋彼岸帽子にマスクサングラスご先祖様はおわか りのはず

長崎 吉田耕一

好奇心新たな趣味に友増えて八十路の坂も挨拶多 忙

奈良 中村宗一

稲刈りを前に圃場の水を切る助けを求めて亀がわ が家に

京都 観山ヒロクニ

有明の月の雫がやさしくて暁参道チチロも鳴いて

青森 吉田 敦

今日の料理キューピー三分クッキング受話器を上げて祖母への電話

滋賀 大林 等

栗に柿秋の味覚をテーブルに自然の恵みに今年も感謝す

四句目「自然の恵み」を「自然の恵みに」に結句「今年も感謝」を「今年も感謝す」に。

俳壇
坪内稔典 選 投句総数266句

大阪 西岡正春

法然とチンギス・ハンも天の川

法然とチンギス・ハンは天の川で何をしている? 泳いでいるのでしょうか。それとも二人でボートに乗っている? 想像のふくらむ天の川の風景です。

兵庫 堀毛美代子

陶工の頬につちくれ秋夕焼

この陶工のすがた、いいですね。夢中になって仕事をしているのでしょう。陶工の顔が夕焼けのなかでクローズアップになっている感じです。

京都 根来美知代

深海魚見に行くだけの冬の旅

こんな旅をしたいです。「あの町のあんパンへ行こ冬の旅」とボクはついさっきに作りました。

福岡 伊熊朋則

秋晴れや研師の指の軽やかに

佐賀 織田尚子

枝豆をさやごとプッチュン口の中

滋賀 小早川悦子

いつ見ても小走りの母秋の暮

大阪 津川トシノ

熟柿食う流しに汁の二、三滴

和歌山 福井浄堂

木犀の香りの届く仁王門

埼玉 三好あきを

今も尚アンポンタンや秋雑草

滋賀 三宅俊子

秋草の生きてく力八十路かな

滋賀 山本祥三

秋晴れや口笛鳴らぬ口の老い

埼玉 山本 明

小春日の退院のバス待っている

滋賀 山中静枝

曼珠沙華あかねの雲と対峙かな

アメリカ 生地公男

敬老の日知人は抜けゆく歯の如し

福岡 稲永順士

湯気立てる羽釜新米あと二分

神奈川 上田彩子

弾き手なきピアノに猫と吾亦紅

京都 大八木純正

炎天下歩幅を伸ばし腕を振る

京都 岡田直子

ルーティン朝一杯のカプチーノ

岩手 小野寺満

兄ちゃんの愛たっぷりの夏野菜

東京 小室清恵

秋日和耳に札つけ子牛来る

静岡 松永信介

秋高し梅とおかかの大むすび

京都 観山哲州

次郎柿は我と烏で共有す

三重 森 陽子

昼寝覚め遠くで号砲競技会

富山 山澤美栄子

コンサートに木犀に酔い家路かな

「コンサートに酔ひ木犀に酔う」が原句。新仮名遣いに統一し、リズムを整えました。