令和8年1月

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歌壇
堀部知子 選 投歌総数113首

群馬 新井日出子

虫の害大樹の桜枯れかけて脂の色見えて飴ならいいな

結句の転換が面白い。上句の大変な場面をものともせず、作者のおおらかさが表現されている。

滋賀 大林 等

文化祭孫のダンスを見学に学芸会をふと思い出す

遠い昔の学芸会を作者は思い出している。今と昔のちがいをきっと実感したのではないでしょうか。

滋賀 奥田壽英

雨やどり一輪の花が無人駅に誰を待つのか置き傘ひとつ

「一輪の花」より「置き傘」がこの一首の主役でしょうね。無人駅であるだけにこの置き傘が謎めいてくるから面白い。

京都 荻野 浩

待ち侘びし火照りを冷ます秋の風吹けよ吹け吹け 身も世も癒せ

福岡 古賀悦子

あげ花火ぱっと開いてぱっと散るわが残生もあら まほしけれ

大阪 橘ミヨ子

亡き母の畑に植えしホトトギスわが庭に付き今年 も咲くなり

宮城 西川一近

朝霜に濡れたる参道に紅と黄にもみじ耀ふ陽光を浴びて

アメリカ 生地公男

人波の青色映えるロスの空和魂野球士誉の凱旋

徳島 横山順子

あじさいに遺影の母は白寿なり孫ひ孫らが笑って 送る

和歌山 良田起巳

見守らるる老いの身なれど辻に佇ち下校児見遣る 秋の日うらら

東京 蚫谷定幸

オフの日は畳に背中をくっつけて地球の音をじっ と聞きます

埼玉 石村和子

烏啼き川鵜が旋回鵯は情報交換雨戸開けたり

滋賀 今村圭吾

咲き初めの菊の花摘む小祥忌や色とりどりに母の面影

大阪 吉田エミ子

赤紙が来ておめでとうを言わされるそんな時代が来ぬ事祈る

添削 「赤紙来て」「おめでとう言わされる」に助詞をきちんと入れましょう。

俳壇
坪内稔典 選 投句総数274句

福岡 伊熊朋則

ワイパーにたまりし病院の落葉

俳句は「五七五の言葉の絵」である、とボクは言ってきた。この句、まさにその言葉の絵です。この絵から何を思うかは読者の自由です。ボクは諦念というか病気のしつこさに向き合う心を連想します。

大阪 津川トシノ

つわぶきの黄色を辿り友の家

すてきな訪問です。親友が待っているのでしょう。もしかしたら俳句仲間?

兵庫 堀毛美代子

青空の奥の奥まで百舌日和

「百舌日和」は鵙の声が響くいい日和です。冬晴れです。この句も見事な言葉の絵になっています。

大分 小俣千代美

ギター弾くぽつぽつと弾く文化の日

東京 伊藤 文

新米の天下一品塩むすび

長崎 香林亮精

あの熊も仏のこども冬に入る

福岡 谷口範子

頑張って新米ゲット一等賞

岩手 佐々木敦子

仏飯や高々と盛る今年米

大阪 西岡正春

熊穴に入らず公民館に入る

大分 吉田伸子

秋うらら身長ちぢむ健診日

神奈川 上田彩子

青蜜柑毎年開くクラス会

静岡 太田輝彦

サイクリング秋を切り裂く下り坂

京都 神居義之

起き抜けに出て寒暁のスーパームーン

東京 小室清恵

縞馬の急にごろりと秋の昼

長野 出澤悦子

イングランドの土産茶香る秋うらら

青森 中田瑞穂

考える歩幅となりて今朝の冬

大阪 林 孝夫

秋晴れに玉葱二百植え付ける

滋賀 服部 憧

櫨の実をつい見上げたる僧の庭

静岡 松永信介

小春日や赤子の声の歩きだし

京都 観山哲州

竜馬像ブーツに降りし紅葉かな

京都 観山ヒロクニ

臍見えし仁王立像秋うらら

愛知 山崎圭子

窯変の色めく桜紅葉かな

山梨 山下ひろ子

星月夜AIに聞く明日のこと

長崎 吉田耕一

縫い終えし妻の玉留め雪明り

添削 原句は「針刺しや」だったが、情景が「575の言葉の絵」として際立つように直した。