迫力満点の冷たいそば「かき揚げおろし」が大人気 川港茶や 塩屋 橘
新潟県阿賀町・新善光寺檀信徒
江戸時代、会津と越後を結ぶ幹線道路として栄えた会津街道。そのちょうど中間あたりに位置する新潟県阿賀町。町の中心である津川は宿場町として知られ、古くは阿賀野川と新潟湊を結ぶ水運が栄えたところで、毎年催される「狐の嫁入り行列」で有名だ。狐の化粧を施した花嫁花婿を始めとする行列が、町内を練り歩くという奇祭である。その記念館ともいうべき「狐の嫁入り屋敷」のすぐ側にあるのが、『ミシュランガイド新潟』にも掲載されたそばの名店「川港茶や塩屋橘」だ。
雁木造り(積雪下においても通行機能を確保するために町家の庇などを長く張り出した通路)の発祥地である津川ならではの歴史を感じる建物も目を引くが、暖簾をくぐって中に入ると、さらに目を丸くすることに。高い天井と長い廊下の古風さ加減に、圧倒されてしまうからである。
その癒し空間の中で味わえるのは、つなぎを一切使用しない西会津産の挽き粉のみを使った十割そば。風味はもちろんのこと、腰の強さや喉越しの良さが格別なのだ。
ところが意外なことに、一番人気は巨大なかき揚げがド〜ンとのった、冷たいそば「かき揚げおろし」(税込1200円)だという。少々風変わりであるが、大きいお皿にそばと大根おろしが盛られ、その上に玉ネギやカボチャ、シメジなどを揚げた特大のかき揚げをドン! 高さ10センチはあろうかと思えるほどの大きさに、初めて目にするお客さんの誰しもが、目を丸くしてしまうのだ。
見た目の迫力もさることながら、揚げたてのサクサク感と、濃いめのつゆをかけて味わうそばの風味、さらには大根おろしのサッパリ感が見事に融合。癖になってしまいそうだ。
もともとフランス料理人だったというご主人の矢部和男さん(75歳)も、工夫を加えて苦労の末に編み出したとはいえ、「ちょっと邪道かなあ〜?」と少々気がかりだったとか。ところが蓋を開けてビックリ。週末ともなると行列ができるほどの人気メニューになった。永年の経験に裏付けられた感性には驚くばかりだ。
(ライター:藤井勝彦)
〒959-4402 新潟県東蒲原郡阿賀町津川3508番地
TEL:0254-92-2073
■営業時間=11時30分〜14時(土、日曜は〜15時)、夜は予約のみの営業
■定休日=不定休
■JR「津川駅」より徒歩20分
■駐車場なし
■HP=https://www.shioyatachibana.com/