ふんわりキリリ、灘の酒 仕事終わりに冷酒でいかが? 泉酒造
神戸市東灘区・阿彌陀寺檀信徒
日本三大酒処のひとつ、兵庫県の灘。灘の酒は江戸時代には樽廻船で運ばれ、江戸っ子たちを虜にした。
今回訪れた「泉酒造」もその一つだ。案内してくれたのは、蔵元の泉藍さん。
「ここは六甲山と海が近いので、海と山のミネラルを含む湧き水があるんです。うちでも、蔵にある井戸の湧き水を仕込み水に使っています」
さっそく『仙介/純米大吟醸』を冷酒でいただく。驚いた。とてもやわらか、でも後味はキリリと引き締まり、心地よい余韻が続く。これは、一目惚れならぬ、一口惚れしてハマってしまうタイプのお酒だ。
仙介は藍さんの祖父の名前。阪神淡路大震災で蔵が焼失した際、酒造は12年間休業を余儀なくされた。再開が望まれるなか、仙介氏は逝去。祖父の想いを継ぎ、藍さんが蔵を再開した。多くの地元の人に助けられ、新たに造ったのが、祖父の名を冠した『仙介』だった。
「常温やお燗で美味しい酒もいいけれど、冷蔵庫から出してすぐ飲める気楽さも大事」と、藍さん。だから泉酒造には冷酒で美味しい生酒がたくさんあるのだ。
「毎月全員で会議をするんです。静かにせ~!ってくらい盛り上がって大変(笑)」
仕込み時は泊まり込みで麹の世話をする。大変な仕事だからこそ、「楽しく働く」。これが藍さんの信条だ。
「前例にとらわれず、やりたいことをタンク1本だけ仕込む〝泉チャレンジ〟をやっています」
たとえば、会議で「日本酒をロックで飲みたい」という意見から〝泉チャレンジ〟が発動。ロック専用の『仙介/純米ROCK無濾過生酒原酒』が誕生。大好評ですぐに完売したという。
コロナ禍には積極的に〝泉チャレンジ〟に取り組み、酒造りができる幸せを噛みしめた。震災を経験をした灘の酒蔵のたくましさたるや。
「地元の人が、うちの酒を地元のお土産として使ってくれたときは本当に嬉しかった」と、藍さん。祖父から継いだ想い、そして灘の地への感謝が泉のようにあふれ出た。
(フードライター:藤岡操)
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