蚕糸業で栄えた藤岡市「絹宿」の鰻で歴史に思いを馳せる 柏屋四郎右衛門
群馬県藤岡市・一行寺檀信徒
JR高崎駅から八高線で15分、JR群馬藤岡駅に降り立った。この土地は古来、養蚕が盛んで、江戸時代には全国の呉服商が集まり、大きな絹市が開かれた地域。世界遺産・富岡製糸場や、高山社が建てられ、日本の近代経済史に大きな足跡を残した。
JR高崎駅から八高線で15分、JR群馬藤岡駅に降り立った。この土地は古来、養蚕が盛んで、江戸時代には全国の呉服商が集まり、大きな絹市が開かれた地域。世界遺産・富岡製糸場や、高山社が建てられ、日本の近代経済史に大きな足跡を残した。
ここにかつて「絹宿」として栄えた店が、蔵を再生して食事処を営む『柏屋四郎右衛門』がある。絹宿とは、絹糸や絹織物を扱う仲買人の始まりで、買い付けに来た商人を宿泊させたことから付いた名だ。『柏屋』の看板を掲げて300年、母屋は旅館業を営む。
中庭に進むと、見えてくるのは大きな蔵造り。明治時代に建てられた2棟の蔵を改装した建物で、鰻を中心とした食事処として親しまれている。足を踏み入れると、天井が高く開放的なことにまず驚く。落ち着いて洗練された和モダンな雰囲気で、蔵独特の力強い梁や先祖から受け継いだ大きな欅の大戸、時代を感じさせる調度品がほどよい重厚感を生み出している。江戸期の書簡や書物もあり、歴史に思いを馳せるのも一興。
人気の「うな重」は、甘たるくない江戸前の味わい。ふっくらととろけるような身に、コクのあるタレが抜群である。鰻は浜名湖から産地直送で仕入れ、創業以来枯れたことのない井戸水で泳がせてから締めており、泥臭さは微塵もない。ことのほか暑かった今夏。鰻でその疲れを癒してみてはいかがだろうか。
「代々の当主は、絹宿という仕事に誇りを持ち、地域に役立ちたいという思いで商いを続けてきました。先代は菩提寺の総代を務めています。私で14代目ですが、先祖の心はしっかり受け継いでいますよ」とご主人の松村賢志さん。藤岡の歴史的遺産に惹かれて訪れる者に、貴重な昔話を聞かせてくれる存在である。
(ライター:岡本茉衣)
〒375-0024 群馬県藤岡市藤岡55
TEL:0274-22-0006
■営業時間=11時〜14時、17時~21時(L.O 19時)※夜の部は予約制
■定休日=日曜夜
■JR「群馬藤岡駅」より徒歩約8分
■駐車場あり(30台)
■HP=http://www7.wind.ne.jp/kashiwaya/shiroemon.htm