‟タヌキ色”の料理とは!?親子三代で味を紡ぐ 洋食屋 グリルニュー狸


金沢駅から南東へ車を走らせると、小立野という地域が見えてくる。近くには兼六園や加賀藩前田家ゆかりの寺院が点在し、金沢らしい風情ある街並みだ。
そこへ、ひときわ存在感のある大きなタヌキの像が目に飛び込んできた。看板には「洋食屋 グリルニュー狸」とある。昭和42年(1967)創業の老舗洋食店。 店名の「狸」は、初代店主の矢田紀彦さんが修業していた洋食屋「狸茶屋」から独立する際に、その一文字をいただいたものだ。
メニューを開くと、ハヤシライスやオムライスなどオーソドックスなメニューが並ぶが、味わいには店の独自性が強くにじむ。
「初代である父から受け継いだレシピが多いでしょうか。ソースはすべて手作りで、ドレッシングも自家製。隠し味に意外な食材を入れることもあって、その積み重ねが個性につながっているのかもしれないですね」と話すのは、2代目店主の佳弘さん。
看板メニューの一つに「ヤキメシ」がある。茶色、いや〝タヌキ色〟に炒められたチャーハンのような料理で、他にはない一皿だ。醤油ベースの秘伝のタレが香ばしく、食欲をそそる。ゴロゴロと入ったチャーシューはうまみたっぷりで、干しシイタケが食感のアクセントに。食べ進めるごとに奥行きのある味わいに、スプーンが止まらない。
続いて、金沢市民の台所「近江町市場」で仕入れた鮭を使ったサーモンステーキ。ジューシーなサーモンに爽やかなスライスオニオンが好相性。自分へのご褒美にしたいごちそうだ。
現在は、2代目店主である佳弘さん、初代の紀彦さん、息子の勇紀さんの親子3代で厨房に立つ。「店を良くしたいと思う気持ちはみんな同じ。ぶつかることもあります。でも息子の新しい感覚も尊重したいから、少しずつ任せるようにしています」。3代で店を続けられるのは、やはり地域との絆が深いからではないだろうか。一皿に込められた想いが、人々の心と日常に根を張っていると感じた。
(ライター:岡本茉衣)

- 〒920-0942 石川県金沢市小立野3-27-12
- TEL:076-262-6658
- 営業時間=10時~14時30分 17時~20時30分
- 火曜、第3月曜
- JR金沢駅から車で約20分
- 駐車場あり(7台)