浄土宗新聞

映画化もされた「夫婦善哉」 発祥の店で夫婦円満を願う 法善寺 夫婦善哉

投稿日時

大阪市・法善寺信徒

メニューはシンプルで、「夫婦善哉」と「冷やし善哉」のみ。いずれも800円
メニューはシンプルで、「夫婦善哉」と「冷やし善哉」のみ。いずれも800円

大阪・ミナミの代表的な繁華街である戎橋商店街。ほど近くには、水掛不動尊で有名な法善寺がある。不動尊に参拝するため多くの人が訪れるが、参拝客からこよなく愛されているのが、不動王像の右手にある「夫婦善哉」だ。
お店の名前を聞き、「もしや?」と思われる方もいるかもしれない。そう、映画化もされた有名な小説『夫婦善哉』のモチーフとなったお店だ。
昭和15年に出版されたこの小説は、勝ち気でしっかり者の芸者・蝶子と、気弱で道楽者の若旦那・柳吉の夫婦物語。二人はさまざまな商いに手を出すがどれも長続きしない。ある日柳吉が、「どや、なんぞうまいもん食いに行こか」と蝶子を連れ出したのがこのお店。一人分のぜんざいが二つの椀に盛ってあるのを見て蝶子は、「一人より夫婦の方がええいうことでっしゃろ」としみじみと言うのだ。
作者の織田作之助は、「法善寺横丁のなかでも夫婦善哉はもっとも有名で、一人前で二椀の善哉に夫婦と名付けたところに大阪の下町的な味がある」と綴っている。
ぜんざいは、高級小豆の代名詞である丹波大納言小豆を一日かけて釜で炊き、さらに一晩寝かせる。こうすることで甘味が出て、小豆のふっくらとした食感が生まれるのだという。
黒く光るつややかなぜんざいをそっと口に運ぶと、小豆のまろやかな味わいと滋味深い甘さが広がり、実に幸せな気分に。口直しの北海道道南産の塩昆布も、ぜんざいを引き立てる。

店長の上村より子さん
ぜんざいは上村さんほか2名しか作ることのできない職人技。水掛不動尊は商売繁盛や縁結びのご利益があるとされ、参拝記念に夫婦で立ち寄る人も多い

創業は明治16年というが、一人前のぜんざいが二つの椀に盛られるようになったのは、昭和期に入ってから。“二つで一つだから縁起がいい”と売り出したようだが、実際の理由は、二つの椀だと一人前でも多いように見えるから、ということらしい。
だがこれが当たり、映画化までされたのだから発想の勝利といえるだろう。店内は織田作之助の初版本や、小説・映画ゆかりの著名人のサインもずらり。参拝ついでに必ず立ち寄りたい場所だ。
(ライター:岡本茉衣)

店舗情報

〒542-0076 大阪市中央区難波1-2-10
法善寺MEOUTOビル
TEL:06-6211-6455
HP:https://sato-res.com/meotozenzai/
■営業時間=10時~22時 
■定休日=年中無休
■駐車場なし
■地下鉄「なんば駅」より徒歩2分
※価格は税抜