少し蒸らしてふんわりとろり ツウの気分で江戸前うなぎ つきじ 宮川本廛
東京都文京区・心光寺信徒
幕末の江戸・深川に「宮川」という人気のうなぎ屋があった。その暖簾を受け継いたのが『つきじ宮川本廛』だ。
「初代の渡辺助之丞は私の祖父です。後継者がいない『宮川』を引き継ぎ、築地で創業しました」と、案内してくれたのは四代目の渡辺安良さん。
「うちではうな丼とうな重は同じメニューで、好きな器を選んでいただきます。親父は丼派で、フタをしたまま少し蒸らすのが好みでした」
なんとツウな食べ方! 私も鼻息荒く〝うな丼チョイ蒸らし〟を注文。待つことしばし、登場した丼は、うな重と同量のうなぎを使っているだけあって特大だ。
香り立つ赤だしをいただきつつ、少しのがまんの後、待ってフタを開けると、しっとりとしたうなぎの姿。焦げ目が控えめでとても上品だ。
二口、三口……ずっとふわとろで軽やか。蒸らしのおかげか、甘さ控えめの醤油味がよく馴染んでいる。ここに、ごはんに合わせて配合を変えた〝かけダレ〟と山椒をかけると、キリリと味が変化した。うなぎの香りとともに、時々かじる奈良漬けの香りが口に広がるや、うなぎに合わせて造ったという辛口の日本酒「宮川」(1合770円~)が欲しくなる。
「うちは創業以来何ひとつ変えていません。タレは継ぎ足し、使っているのはずっと同じ醤油とみりんだけ。130年近く、数え切れないほどうなぎをくぐらせてきた味です」
生きたうなぎを手早くさばき、丁寧に串を打つ。素焼き、蒸し、タレをつけて焼く、再びタレを付けて焼く、さらにタレを付けて焼く。「串打ち3年、割き8年、焼き一生」と言われるが、扱う素材はうなぎだけ。そこにここまでこだわり、手間をかけるのが江戸前のうなぎだ。
支えているのは「調味料ひとつ変えることはない」と言い切る、代々受け継ぐ覚悟。そして、誇り高き歴代の職人たち。今も、宮川一筋、職人歴65年の大野清富さんが、調理場で味を守り続け、若い職人を育てている。
(ライター:藤岡操)
店舗情報
〒104-0045 東京都中央区築地1-4-6
TEL:03-3541-1292
HP:http://www.unagi-miyagawanorenkai.jp/
■営業時間=11時30分~14時、17時~20時
■定休日=土曜日
■地下鉄 東京メトロ有楽町線「新富町駅」、東京メトロ日比谷線 「築地駅」より徒歩5分
※価格は税込
※テイクアウトあり(要問い合わせ)