浄土宗新聞

松山市民に愛されて七十余年風味豊かなパンに笑みがこぼれる うちだパン

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松山市・長建寺檀信徒

夏目漱石『坊ちゃん』の舞台、松山市。その中心部を取り囲むように走る路面電車に乗車すること、10分程の場所に、市民から長く愛されているベーカリー「うちだパン」はある。
その歴史は、70年あまり前の終戦時に遡る。先代の店主がロシアに抑留されたとき、パン作りの経験などなかったにもかかわらず、ロシア人が食べるパンを毎日のように作らされたという。その後、日本に帰還し、ロシアで得たパン作りの知識を活かし、パン屋を創業した。

店を代表する人気商品「クレセント」は87
円。食事によく合う塩パンで、生地を折り込むため独特の食感だ
店を代表する人気商品「クレセント」は87 円。食事によく合う塩パンで、生地を折り込むため独特の食感だ


パンが焼ける香ばしい匂いが漂う店内に入ると、パンの種類のあまりの多さに圧倒されてしまった。常時数十種類、トータルで百種類以上もあるというから驚きだ。定番の食パン、クロワッサンから、カレーパンなどの食事パン、ミルクフランスといった菓子パンまで、実にバラエティ豊か。どれにしようかと、迷う時間も楽しくなってしまう。
店を代表するのは黒糖パン。先代の味わいをそのまま守り続けており、常連客から長く愛されている。食欲がそそられるようなブラウンの食パンで、沖縄産の黒糖が実に風味豊か。口に含むとほんのりと甘く、ふわりと口の中でとろけるような優しい食感だ。

ソフトな甘さで、目玉焼きなどおかずにも合う「黒糖パン」は一斤270円
ソフトな甘さで、目玉焼きなどおかずにも合う「黒糖パン」は一斤270円

現在、鯛の骨を細かく砕いて練り込んだパンや、愛媛名物「坊ちゃん団子」を使った″変わり種〟を開発中だ。これは、さまざまな企業からコラボレーションを依頼されるという。「うちだパンなら、きっとおいしいパンを生み出してくれるだろう」という期待と信頼があるに違いない。
小麦粉、バターなどの原材料価格の高騰に加え、光熱費の値上げなど、パン業界を取り巻く環境もますます厳しくなっているが、うちだパンでは、極力値上げをしていない。
「生活に欠かせない食べ物ですから、出来る限りの努力をして価格を維持しています。米粉を使ったパンも増やしています」と店主の内田敏之(としゆき)さん。焼きたての香ばしいパンで、これからも松山市民の食卓を支えてほしい。
(ライター: 岡本茉衣)

店舗情報

二代目店主の内田敏之さん
二代目店主の内田敏之さん

〒791-8015 愛媛県松山市中央1-12-1
TEL:089−989−7262
■営業時間= 7時~19時30分
■定休日=木曜日
■伊予鉄環状線「萱町六丁目駅」から徒歩9分
■駐車場あり(10台)
■HP=https://www.uchidapan.com/
※価格は税込