浄土宗新聞

【浄土宗の読む法話】備えあれば憂い無し

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今年の夏は格別の猛暑に加えて、いくつもの台風が発生し、河川の氾濫や堤防の決壊などによる甚大なる被害が多くもたらされました。テレビのニュースでも、台風の予想進路が報道されると、仕事の手を止めてその報道を注視した事でした。亡くなられた方々の冥福を祈ると共に、被災された方々が一刻も早く、もとの生活を取り戻せるよう願っております。

さて、現代はこうした事前の予知報道が早め早めに各メディアによって知ることができ、以前に比べて被害も比較的少なく、また混乱を最小限に食い止めることができるようになった事は、誠にありがたいことです。

「備えあれば、憂い無し」―――――――中国の宋の時代、居士と称讃されているほどの浄土教者の王日休さん(1105ー1173)が撰述した『浄土文』に、備説として次のようなわかりやすい言葉をもって、来るべき時にあたって備えをなすことが絶対必要不可決であることを説いています。

     昼には必ず夜がある。どうして夜の備えをしない人があろうか。
     暑には必ず寒がある。どうして寒の備えをしない人があろうか。
     生には必ず死がある。どうして死の備えをしない人があろうか。
     何を夜の備えとするのか。灯火・寝具である。
     何を寒の備えとするのか。衣料・燃料である。
     何を死の備えとするのか。浄土往生である。

王日休さんは、昼のうちに夜の準備をしなさいと促しています。暑い最中さなかにあって、必ず次にくる寒さへの対策準備を完璧にと奨めています。元気に生活してる今、いつ来るかわからない死への準備を怠ることなかれと警鐘を乱打しているのであります。

王日休さんは、命終に臨んで励声念佛を唱えて阿弥陀佛の御来迎をうけて浄土往生を遂げたのでした。

私たちにとってだれにでも死縁は近づいてまいります。死縁に対する最善最勝の備えとは、南無阿弥陀佛の平生のお念佛です。常に平生のお念佛を相続しておれば、そのまま臨命終時のお念佛となり、阿弥陀佛の御来迎をいただき死苦の問題解決を果たし、お浄土に往生させていただけるのであります。

「備えあれば憂い無し」であります。

合掌

滋賀教区 湖南組 西方寺 安部 隆瑞