日々のおつとめ―浄土宗日常勤行式 第7回 「四誓偈」
阿弥陀さまの誓い「四誓偈」
我建超世願 (がごんちょうせがん)
必至無上道 (ひっしむじょうどう)
斯願不満足 (しがんふまんぞく)
誓不成正覚 (せいふじょうしょうがく)
意訳
私(法蔵菩薩=仏になる前の阿弥陀仏)は世にすぐれた本願(四十八願)をたてました。
私は必ずその本願を成就して、さとりを得ます。
もしその通りに成就できなければ、私は仏にならないと、固く誓います。
我於無量劫 (がおむりょうこう)
不為大施主 (ふいだいせしゅ)
普済諸貧苦 (ふさいしょびんぐ)
誓不成正覚 (せいふじょうしょうがく)
意訳
私は未来永劫に渡って大いなる慈悲を施し、心の貧しさや苦しみにさいなまれている人々をもれなく救います。
もしその通りに成就できなければ、私は仏にならないと、固く誓います。
我至成仏道 (がしじょうぶつどう)
名声超十方 (みょうしょうちょうじっぽう)
究竟靡所聞 (くきょうみしょうもん)
誓不成正覚 (せいふじょうしょうがく)
意訳
私が仏道を完成したならば、私の名号がありとあらゆる世界にまでいきわたり、どこにおいても耳にすることができるようにします。
もしその通りに成就できなければ、私は仏にはならないと、固く誓います。
今回から2回に渡って誦経「四誓偈」を解説します。
誦経とは、浄土宗の教えのよりどころとなっている『無量寿経』 『観無量寿経』『阿弥陀経』 (3つを総称して「浄土三部経」 )を読み上げることです。ただ、どれも長いお経なので、日常的にこれらすべての経典を読むのは容易ではありません。そこで日常勤行では、この中から特に重要な文節を抜き出して読んでいます。
その一つが『無量寿経』の中にある「四誓偈」です。
48の誓い
仏教には阿弥陀仏や薬師如来など数多くの仏さまがいらっしゃいますが、みな修行時代(菩薩の頃)にさまざまな誓いを立て、それを成就することで〝仏〞となられています。阿弥陀仏も例外ではありません。その誓いを「誓願」もしくは単に「願」といいます。
『無量寿経』には、阿弥陀仏がまだ法蔵菩薩として修行されていた頃にたてた 48の願い(=四十八願)や阿弥陀仏となって建立した極楽浄土の素晴しさ、そこに往生するための方法、阿弥陀仏の功徳などが説かれています。中でも四十八願は〝本願〞ともいわれ、これなくしては浄土宗の教えそのものがありえなくなる最も大切なもので、 「四誓偈」にも深く関わります。
法蔵菩薩は、世自在王如来という仏さまの前で、 「自分も仏となってあなたのようにすべての人々を救いたい」と思いを示し、仏となるならば、こういうことを実現するという具体的な決意を四十八項たてました。
これが四十八願です。
例えば、私の建立する浄土には地獄・餓鬼・畜生などの苦しみの境涯がないようにしたい、という「無三悪趣の願」にはじまり、衆生の臨終に際し、自ら迎えに参ります、という「来迎引接の願」など、どれも衆生救済を中心にすえたものです。
その中で特に「南無阿弥陀仏と私の名をとなえる者は、必ず極楽浄土への往生をかなえる」という十八番目の 「念仏往生の願」 は〝王本願(本願中の王) 〞とも称され、浄土宗信仰の根幹であり、四十八願の中で最も重要な願です。
これらの四十八願は、経典で「設我得仏=私が仏となったならば」の書き出しで記され、諸々の願が成就しなければ「不取正覚=仏とはならない」と結んでいます。そこに法蔵菩薩の願いの壮大さと意志の強さがうかがえます。
四誓偈の要点
「四誓偈」では、48の願い全てを世自在王如来の前で誓ったあとに、改めてその決意を示し、世自在王如来の功徳を讃え、自らもそうありたい、としています。いわば意志表明文ともいえ、その題の通り、四つの誓いに分けることができます。
今回は最初の三つを取り上げました。
一つ目は、誓い終わった四十八願について、あらためて決意を表し、そのすべての成就を誓っています。
二つ目は、四十八願に共通する基本理念ともいえるもので、 未来へ続く衆生(現代に生きる私たちも含めて)をあらゆる苦しみから救う、という誓いです。
三つ目は、 私 (阿弥陀仏)の名前をあらゆる世界に行きわたらせる、というものです。これは、念仏する者がみな平等に、そして必ず救われる浄土を建立しても、その名が世に知られず、念仏する者がいなければ意味がありません。だからこそ、行きわたらせることを誓っているのです。
これらの三つの誓いは、それぞれに、 「誓不成正覚=誓って正覚を成ぜじ」と結んでいます。つまり、 〝この願が成就しなければ私は仏にはならない〞ということです。強い決意が誓われていることがうかがえる一節です。そしていずれの願も成就し、すでに阿弥陀仏となられているのです。
―次回は四つ目の誓いを解説します。
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