2023年9月:継続とはあきらめないこと
今年も、九州や東北を襲った天災が各地に大きな被害を残しましたことは、皆さまもご存知のとおりです。ご不幸にも亡くなられた方、住まいや家財を失われた方が多くいらっしゃいます。
私たちは、自然と共に生かされています。自然は私たちに多くの恵みをもたらしてくれます。私たちの食を支える「海の幸」、「山の幸」も自然からの贈り物です。しかしながら、時に、命をも奪う大きな牙で襲い掛かることがあります。
たびかさなる豪雨や震災、特に、2011年3月に発生した東日本大震災は、目を覆いたくなる大惨事でした。死者1万6千人、今だに行方不明になられている方も数千人に上ります。それらの自然災害は、多くの命を奪い多くの財産も取り上げ、何よりも私たちの心に大きな傷跡を残しました。当時、ある住職の発案で、多くの僧侶や檀信徒と被災地に伺いました。被害の悲惨な光景に絶句し防災センターで亡くなられた方の供養をしましたが、涙が止まらなかったことをいまでも鮮明に覚えています。
しかしその一方で、阪神淡路大震災、東日本大震災、頻繫に起きている豪雨被害も多くの人々の力により復興を遂げてきました。私たちは、自然には勝つことはできませんが、皆さんと共に立ち向かうことはできます。その結果、以前より生活しやすい空間や災害に強い環境が作られてきました。小さな個人の力も多く集まることによって災害に立ち向かうことができ、″継続〟とは、″あきらめないこと〟だといえます。
私たちは、一人で生きているわけではありません。たくさんの人と共に生きているのです。辛いときや苦しいときなど困難に出会ってしまったときには、誰かに頼ってもいいのだと思います。
浄土宗の「二十一世紀劈頭宣言」(「愚者の自覚を」、「家庭にみ仏の光を」、「社会に慈しみを」、「世界に共生を」)は、法然上人を宗祖と仰ぐ浄土宗のすべての人々の幸せを願っての宣言です。私たちは、多くの人々に支えられて生きていることを改めて自覚し、精一杯この世で生きてゆければよいのではないかと思っております。法然上人のお念仏とともに。
(新潟県上越市 天崇寺 長谷川三靖)